【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】
そうなのか?みんな、そんな目で俺の事を見てるのか?
今すぐ訂正したかったが、敢えて止しておいた。
「たぶん、僕には才能はない。思うに、
環境に相する、必要最低限の才能もどきがあるだけです。
要するに、僕と同じ人生を辿れば、誰でも同じ物を
書けるってことです。
世の中には、天才という人種がかなり確実な段階でいます。
そいつらには、百万倍努力したって、
百万遍闘ったって、勝てないんです。
神様はそういうふうに世界を作りました」
神。沢村の口から神っていう言葉が出たのを、
初めて聞いた気がした。
「将来や未来なんてのを朧げに考えていく限り、
絶望との追っかけっこです。人生なんてのは」
沢村の言う事を、俺は何一つ否定できなかった。
それは多分、俺がいつも考えていて、だけど
丁寧な言葉では表しきれなかった事だったから。
沢村。俺は特別なんかじゃないよ。
きちんと逃げないで思考できる、お前のが凄いよ。
「僕、逃げ切れないで死んじゃうかもなぁ」
俺は逃げる事すらしない。
追いかけっこを実施している、道路にすら上がらない。
頑張れ沢村。
努力しているお前なら、いつか雀の涙程の喜びに
巡り合えるよ。きっと。
お前が幸せになれないとしたら、
世界には希望なんてものは一欠も残ってないって事だ。
これが、夏休みに入ったばかりの俺達。
その時は、まだそうやって思えていたんだ。
それから、俺達に起こった出来事は、
神の存在を信じるにはあまりに
ノーホープで、ヘビーな出来事だった。
作品名:【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】 作家名:砂義出雲