laughingstockーerenaー
その声に怒りを覚えて手放さないように暴れる彼女を胸に閉じ込めて叫ぶ。
「・・・・いつまでも勝手な事を。エレナはお前の元には行かせられない」
〈リーフ・・・!!!オマエハイツモイツモ邪魔ヲ・・・シテクレル・・・〉
青い光の力が強くなった気がする。精神で引き摺られないように耐えても身体ごと引き摺られ始める。歯を食いしばり、エレナごと離れる方へ力を込める。
しかし一人では限度がある。二人分を引き摺るにはリーフには力が足りなかった。
「パパス・・・何処にいるの?そこにいるんじゃないの・・・?今私を抱きしめてる人はいったい誰・・・?」
自我を完全に失くした瞳で彼女は首を傾げ、迷いに心を砕いている。ウサギと今入っている感覚に頭が混乱しているのだ。
リーフはその様子を見て心の中でエレナに謝った。
「・・・・エレナ、僕が本当のパパスだよ。遅くなってごめん。姉さんを一人にして」
エレナの瞳から大粒の雫が零れるのを見て、リーフはそっと目を閉じる。
「パパス・・・・ずっと待っていたのよ・・・ごめんね。私、貴方を一人にして」
「いいんだよ。姉さん、危ないから向こうへ行こう・・・もうずっと一緒だから」
「いっしょ・・・いっしょね」
そういって微笑み、胸に頬を寄せて目を閉じ、意識を手放した彼女を抱いて彼女の力に働きかける。無意識に彼女の力に同調させる。これはウサギと行っている事だったが、意識を手放したpielloとでも出来るだろうと思う。
それは成功した。
束縛に負けることなく、青い光が遠い場所まで離れることが出来たのだから。
そこまで来てリーフは座り込む。身体はもう限界だった。
しかしエレナを安全なところまで連れて行ってあげなければ、彼女を護ることはできない。
なけなしの力を振り絞って、廃城の最も離れた場所へ飛んだ。
作品名:laughingstockーerenaー 作家名:三月いち