ぼくがであった鬼
と、一人が言ったので、ぼくはそばにあった小型の宇宙船に乗り込んだ。
本物のロキは、お兄ちゃんたちといっしょにいて、心配そうな顔で見ている。なにかいいたそうに口をもごもごさせて。
「ちょろい、ちょろい」
ぼくはウインクをして、コントローラーのスイッチを入れた。
ところがさっきの宇宙船と勝手が違うんだ。
「おい、ロキ! それは旧式の」
気がついた教官が叫んだけどもう遅い。ぎゅーんと小型機は空へ舞い上がって、きりきりと回転しながら、めちゃくちゃに飛び回った。
「うわあぁぁぁ!」
地面が目の前に迫った。ぶつかる!
まぶしくて目が覚めた。車の震動で頭のてっぺんがちょっと痛む。
「ヒロキ。だいじょうぶか?」
運転席からおにいちゃんが声をかけてきた。
「あれ? ここは地球? ロキは?」
「夢でも見たんじゃないのか?」
お兄ちゃんは笑いながら言った。でも、夢なんかじゃない。だって、ぼくの服、ロキと交換したままなんだもん。
また今度、ぼくは鬼火山に行こうと思う。きっとロキに会えるから。