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laughingstockーroi-

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ウサギの姿のままの者もいる。完全な人間もいる。透けて視えるような者もいた。
人間は皆一人の人間を模っていた。

「・・・あれは」
「あれがシオン。この馬鹿げたシステムを作り上げた者だ」

彼の格好や様子はウサギによって違う。しかしどれも彼の姿を模り異様な風景だった。

「彼だ・・・」

ロイがリーフの肩から手を離し、青い光に近付く。リーフもルイスが気になったが、彼の後ろを追いかけた。
中心に近付くたび、心が持っていかれそうになる。手招きするように光が呼んでいる。

(気が狂うな・・・こんな所にずっといれば・・・)

ロイは迷わず青い光の中に入っていこうとする。リーフがその手を掴んだ。

「ロイ!それは駄目だ・・・!!!分からないけど、その中に入ったら駄目だ!!」
「リーフ、これが俺達の父の願いなんだ」

この中に飛び込むことにどこか必死ささえも見受けられる姿にリーフは頭を振る。

「駄目だ・・・!ロイ、シオンは多分・・・迷ってる!!まだ、決め付けるな!!!」
「迷っている・・・?あの人が・・・?」

ロイの身体は重い。リーフの力では彼を遠ざけることさえも出来ない。片腕にしがみついたまま、言葉で彼を繋ぎ止める。

「僕の側にいたシオンは・・・君に伝えたようなことは何一つ僕に教えてこなかった!ただ、自由に僕に生きろと言った。
 どこかで彼は僕に負い目を持っていたんだと思う・・・覚えている記憶はいつもあの人は悲しそうだった!!!
 ロイ、彼が何のためにこんな事をして、ウサギとpielloを創っていたのかなんて僕は知らないけれど・・・・あの人はもう何も望まないことを望んでいたんじゃないかとも思える!」

「あの人は・・・そんな・・・いつも何かを追い続ける人だ。理想を持ち、いつか自分を取り戻せると。そんな馬鹿な」

ロイが出会ったシオンはリーフの出会ったシオンではないのだろう。どういう作りかは知らないが、それでも彼を想うならロイは考えるべきだとリーフは思う。

「この先に進めば・・・ロイ、あの人の思う通り彼の中に戻るなら、僕は行けない。彼の想いが僕の知っている彼なら君を行かせるわけにも行かない。
 何があっても彼の元へは」
「・・・お前に俺は止められない。そしてお前も彼の元へ連れて行く。・・・力尽くでもだ」

彼の声には苦渋が滲んでいた。
リーフは彼に迷いが生まれたのを感じていた。もう少し、あと少し何かあればロイを説得できる。
あるいは力があれば・・・彼と同等にぶつかりあえるような力が。
ふと周囲に目を凝らすと多勢のpiello達が青い光に吸い込まれていっている。

止めなければ彼が壊れてしまうのに、向かおうとする心の動きにどこかが悲鳴を上げている。
それを振り切るようにリーフは胸を掴んだ。

「・・・黙れ。僕の本能・・・お前の主はあいつじゃない。僕だ・・・!!」

ふと見知った顔が吸い込まれていくのを見て居た堪れない気持ちにも駆られる。彼らは何の罪も無いはずだ。
この岸よりも遠い場所へ目を凝らすと一歩も近付かずに動かない影が見える


 
a.「助けを呼ぶ」

b.「その影に近付く」

作品名:laughingstockーroi- 作家名:三月いち