laughingstock7-3
「信じられないよ。僕は本当に変わったのか。本当に欠落部分が埋まったのか。努力して興味を持ったことじゃない。自然に生まれたもの・・・。
キアラ、それがこんなに苦しい。嬉しいのに苦しい」
その声は何も映していない。けれどその表情が全てを物語っていた。キアラは彼の灰白色の前髪を撫でて落ち着かせるように言い聞かす。
「じゃあお前は失くさないように動かないとな」
「動く?」
人形のように聞き返す彼にキアラは頷く。
「俺はこんな時期にpielloとなった。向こうの世界にもう俺を繋ぎとめるものは何も無くなったからだ。失くすのは一瞬、後悔は今もずっとだ。
今まで色々な人間を見てきたが、後悔では遅い」
後悔は何百年経ったとしてもキアラが忘れる事は無い。理由あって忘れていた時期があったが、思い出してからは未だに胸に刺さった棘のようなものだった。
「もしどうしようもなくなったら俺が助ける」
「キアラが?」
「ああ。いつでも言ってくるといい。数少ない長い付き合いの同僚・・・仲間だ」
「何も・・・何も僕らの事を知らない君が?」
「だからこそ力になれることだってあるだろ」
リーフは黙って髪を撫でられながらおかしそうに笑いだす。
「・・・本当に君はお人好しだ。信頼した振りをした僕に背後から殺されても知らないよ」
「お前はしないだろう。俺を必要とする限り」
「そうだね。是非最悪な状況の切り札として考えておくよ」
リーフの事を信じられるのは本当はそれが理由だけではない。言ってもきっと肯定はしまいとキアラは何も言わなかったが彼がエレナやキアラに気を遣っている事は一目瞭然だった。ロイと絡むことは少ないが彼らはそれなりに繋がりがある。ロイとキアラとエレナの均衡を壊さないようにしているのも彼だとキアラは思う。
裏があって行っている事だとしても人によっては善意となる。実際彼は穏やかに彼らを諌め、仲介している。そんな彼は最後まで理由があろうとなかろうと見捨てきることはできないと思うのだ。
キアラは彼の楽しそうな表情を見ながらこの依頼で自分のしなければいけない事について考えていた。チェレッタが言いたかった事はこういうことなのか。
キアラに任されたのは彼の事だったのかもしれないと思う。
何故此処まで彼の力が抜けているかは知らない。問えば今のリーフなら答えてくれるかもしれない。
だがキアラにはどうでも良い事だ。
この場所にいる理由を誰一人失くしたくない。それが償いともう一つの願いでもあった。
続く。
作品名:laughingstock7-3 作家名:三月いち