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laughingstock4-1

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「エレナ、体調悪いみたいでさ、上へ連れて行ってあげてほしいんだ。僕らはすぐに仕事に出るから」
「ちょっ・・・そんな事一言も・・・」

 エレナの抗議に関わらず、リーフは自分のウサギと共に姿を消す。
 残されたまま、呆気に取られているとロイは黙って入り口へ歩き出していく。

「え?え?ロイ?」
「上へ行くんだろう?」
「いやそうだけどっこのままっ?」
「?」

 分からないといった表情を返すロイに今度はしがみ付いたまま、視線を逸らした先に彼のウサギがいた。右目に鷹のブローチを縫いつけたウサギはロイの後ろを離れずについてきている。

「・・・?」

 自分のウサギとは違うし、毛嫌いしているキアラのウサギや寡黙で大人しいリーフのウサギとも違う。自棄に視線が気になるウサギだとエレナは思った。その様子に気付いたらしいロイがエレナを横抱きに変えて視線を変えさせてしまう。

「・・・エレナ、あまり見るな」
「え?ご、ごめん・・・」
 
不快にさせたかと思い、身を小さくすると頭を振ってロイは否定する。

「違う。俺のウサギはそういうウサギだ」
「ウサギ・・・」
「お前は気付いていないのか?」
 
歩みを進めながらロイは問い掛けるが、その視線は進む先を見ている。エレナは何を問い掛けているのか分からず、ロイを見上げるままだった。

「リーフは気付き始めている。キアラは多分、動かない。お前は目を閉じているか?」
「ねぇ・・・何の事か分からない・・・」
「パパスの事が大切か?」
「勿論よ!私の大事な相棒だもの!」

 ロイは歩みを止めて、目を伏せる。そしてすぐに歩み始める。それから先、何も話す事はしなかった。エレナからも何も話しかけはしなかった。ただロイの諦めにも似た感情を感じて、それがキアラ
が偶に浮かべる表情を思い浮かべさせてひどく嫌な気分だった。

(あんな部屋を見たから・・・あんな怖い部屋の所為。
 忘れたい・・・早く、パパスに逢いたい)

それだけを考える事にして、エレナはロイに抱えられたまま差し込んでくる唯一明るい場所に対して目を細めた。

続く。
作品名:laughingstock4-1 作家名:三月いち