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カナタアスカ
カナタアスカ
novelistID. 4748
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千切れた旗

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 桟橋の終わり、港に敷き詰められた煉瓦との境目で、リレーつばめが振り返った。

「ひとが多くなります。わたしにもう少し寄っていただけませんか」

 つばめの容姿は目立つ。覆い隠すことはできないが、せめて一部だけでも黒尽くめの男の陰に隠れるように、リレーつばめはつばめに傍に寄ることを求める。

「わかった」

 こみ上げるものを抑えつけ、少年は男の隣りで歩き始めた。
 視線を脇へ逸らせばすぐにリレーつばめの肩。見上げずともよいくらいに身長差は縮んだが、比例して遠ざかったものもある。
 それが何か、つばめは名を知らないけれど。


 港湾地区を抜ける直前に背後を振り返った。
 高い棒のてっぺんで、千切れた旗は風に舞っている。曇天に溶け入りそうな旗は、しかし溶けはせずたなびくだけだ。
 完全な姿で舞うわけでなく、風に散り消えるわけでもなく。
 千切れた旗は自分のようだ。
 いまでさえ色褪せたあの旗は、遠からず新しいものと取り替えられるのだろう。
 もはや日を数えるまでになったその日には、眼前の背中のことなど忘れ去ってしまえたらいい。
作品名:千切れた旗 作家名:カナタアスカ