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オレたちのバレンタインデー

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「そんなに怒るなよ。オレだって好きでやってるわけじゃないんだ。それでその、お願いなんだがK子、今年の、そのー……それは、ちょっとやめてほしいんだ。メーワク、というか……」
 ……え?
「と、とにかく、今年はあれは作らないでくれ。あ、他の女子にも言っとけよ。今年はいらない」
 一生懸命唇をすぼめて言うあいつが、急に遠くなったような気がした。――カノジョ、でも、できたのだろうか。まさか。こんなやつに?
 ま、まあ、これでもう、チョコ作る手間は省けたわけね。あー、せいせいした。
「そう。もう今年から作らなくていいのね。分かったわよ、……さよなら!」
 どういうわけか涙が出そうになって、あいつを睨み据えて言い捨て、自転車に乗った。
「おい、ちょ、オレはそういうつもりじゃ」
 そういうつもりなんでしょ、もう結構!
 全速力でペダルを漕いだ。胸が締め付けられるように痛い。なぜだろう。
 ――気付くと、自分の部屋でクッキングの本を開いていた。チョコレートを使ったお菓子の数々が、ページをめくる毎に美味しそうに現れる。
「……作るんだから、今年も」
 なんだかよく分からないけど、今年もあいつに作ることにした。絶対、美味しいの作って、あいつに渡してやる!