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オレたちのバレンタインデー

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 彼は今までの少女の話で大分辟易していた。そこへ更に私の介入である。完全に顔を引きつらせ、戦意を喪失したようだ。
「詳しいことは知らねえ。俺ぁ、あいつらに金で雇われただけだ。こんな面倒事に巻き込まれんのはごめんだね」
 男のプライドを保つためか、逃した敵・Oを睨みつけつつ、私の横をずかずかと通り抜けていった。
 ――Oは助かってもほっとした顔ひとつせず、間髪容れずに言った。
「先生、副会長たちの暴政を止めて下さい。あいつが、危ない」
 暴政? 副会長?
「会長のZと副会長のIですよ。やつら、あいつをやり込めて……この世から消し去るつもりなんです」
 I。彼が?
 では、私の目論みが外れていたというのか。あいつが白で、Iが黒?
「大変だわっ。すぐ、すぐに案内して。場所は分かるんでしょ、Oくん」
 私は言葉にならないうろたえを吐き出そうとしたが、少女の言葉に遮られた。
「……K子さん?」
 ここで初めて、Oは彼女の存在に気付いたらしい。最初にかばったのは彼女であるにもかかわらず。
「ああ。言われなくてもすぐ案内しよう」
 まだ状況を把握できていないまま彼は答え、走り出そうとする。その腕を少女は軽く押さえて、胸に抱えていた包みの一つを彼に押し付けた。
「これ、あんたの元カノから。合コンなんてやめてよね。あのコ、ずっとOくんを待ってるのよ」
 Oは、はっと目を見開いて、それから力無く笑った。
 私は、ここでようやく口を開いた。
「O君、キミは生徒会本部なのか? それに副会長は、間違いなくIなのかい?」

 先生に助けを求めるのは最終手段だった。殊に、A先生には。生徒の生徒による生徒のための生徒会、それがどんなに未熟であっても、取り潰して欲しくないのだ。だって、生徒会がなければこの学校は、ただの進学塾になってしまうから。
 でも、それが完全に変形し、ただ本部のわがままの上に成り立っている今、そんな綺麗事は通用しない。あいつや、大勢の男の青春、いわんや命を犠牲にしてなるものか。僕は涙を飲むぞ。先生、どうにでもして下さい。でも、その後は必ず、僕が立て直してみせる。
 資料室をがらりと開いた。見た目は資料の山。だが奥からは、紛れもないIの高笑いが聞こえてくる。
「くくくっ、どうしたのですか問題児クン。次を打ちなさい、さあ、早く」