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オレたちのバレンタインデー

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12 計画実行―K子


 七時間目のチャイムが鳴るのと同時に、あたしたちは教室を飛び出した。後ろ手に大量の包装したブツを持って。
 校門を出たところで思いがけず学ラン徒歩グループと出くわす。十人程度だが、険しい表情でガンを飛ばしてくる男子たち。着崩し具合からみると……T高校の連中。いったいなんの用?
 怯まず睨み返す。こちらは自転車だ。いざとなったら走って逃げられ……
「かかれっ!」
 るっ?
 先頭のあばた面の男子が、自転車のカゴの辺りに目を留めるや、背後に控えていた不良っぽい男子たちに命令した。
 たちまちあたしたち自転車隊の後尾の女子に襲いかかる。
「キャーッ!」
 黄色い悲鳴。自転車が次々に止まる。
「みんな、だいじょぶ!?」
 返事はない。こちらの方が数の上では圧倒的に有利なはずなのに、もう阿鼻叫喚状態。
「何すんのよあんたたち、あたしたちをどうするつもりっ」
「どうもしねえよ、少し静かにしててもらうだけだ」
 金切り声、自転車の倒れる音が飛び交う。
 あたしたちのアンチ・合コン計画がバレたか……!
 その場を離れるに離れられずギリギリと歯噛みして事態を見守っていると、例のフラれ組にブツの包みを渡された。
「K子、アタシはこの状態をどうにか治める。あんただけでもT高校に乗り込んで」
 喧々囂々、凄まじい乱闘を繰り広げる男女を、あたしは呆然と見つめた。
「でも……あたし一人じゃ……」
「言い出しっぺでしょ。へこたれてどうするの。ここで足止めをくってるアタシたちの想いも代弁して。お願い!」
 長い間、あたしたちは見つめ合っていた。いや、あたしが長いと感じただけで、実際はほんの数秒のことだったのかも知れない。
「――分かったわ」
 沈黙を解いたのは、あたしの掠れた声だった。
「こうなったら、意地でも合コンをやめさせる」
 半ば自分に言い聞かせる。
 自転車に乗り直した。背中に、少しの躊躇いと、甘酸っぱい感情のこもった声が届いた。
「もし、もし渡せるようだったら……それ、Oってやつに渡してくれる?」
 あいつのよくつるんでいた男子だ。冷たい感じの、無口で賢そうな男子。たまに帰り道で三人一緒になると、一見つれなそうだけど、実は結構あいつと仲が良くて、やきもちをやいたこともあった。