世界はひとつの音を奪った
プロローグ
例えば僕がもっとバカであったなら。
いや、例えば僕がもっと頭がよかったなら。
あるいはもっと平和に、普通に、ありきたりな人生を望んだのなら。
他にもある。
人を愛さなければ。世界を憎まなければ。
もっと正直であれば。はたまたもっと嘘が上手だったならば。
自分を恥、あるいは誇り、君にたくさんの幸せを、あるいは闇を。
愛せばよかった。愛さなければよかった。けれども愛しているんだ。
陳腐な台詞。
それよりももっと物事は単純で、けれど運命だとは思わずにいられない程複雑だ。
嗚呼、いつまでも降り止まない後悔という思考に僕は溺れている。
僕は幸せ者だろう…?
作品名:世界はひとつの音を奪った 作家名:黒春 和