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『アフターケア』episode 01

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(6)潜入?



ゴミ屋敷3日目。
私は、翔ちゃんに頼まれたメモの場所に向かう羽目になったのだが、
実のところ、車の免許はあるのだが、ペーパーなのだ。
だから、普段は原チャリが私の交通手段である。
しかし、夏場のバイクは暑くてかなわない。
エンジンからの熱風もそうだし、走っていれば気持ちいいが停車した時のあの温度差がたまらなく思える。

目的地までは、原チャリ5分で行ける。
だが、暑さとヘルメットの蒸れ蒸れ感が。
あ~嫌ぁ。などと考えていると。
程なくして、メモの場所
「介護ヘルパー・天使の羽」に到着した。
私の役目は、おばさんがいるかどうか?
それと、写真と名前・・・
どうしようか迷ってみたが、私の頭はそんなに複雑には出来ていない。
あたって砕けるか?
「すみません。少しお尋ねしたいことがあるのですが。誰かいませんか?」
すかさず、天使の羽に潜入し事務所内をうかがう。さほど、中は大きくはなく、事務机が6人分あるだけで後はごく普通の事務所と変わらない。
介護の会社だから、得体の知れない機械とかあると思っていたが、どうやら間違いだったらしい。
しばらく待っていると、事務所の奥から50代後半で小太りのおばさんが出て来た。
私は、軽く頭を下げると彼女に詳細を告げようと・・・
「はい、何かご用?」

 うわぁ、本人だ。あの写真で見た彼女が目の前に居る。
てことは、第一パターンを遂行せねば・・・えっと。

「あ、すみませんが。私のお婆ちゃんの介護をお願いしたいのですけれど。以前近所に住んでいた方に教えて頂いたのですが。とても親切に介護してくれると評判で、えっとぉ~名前が出てこないのですけど。Y区の鈴木のおばあちゃんに聞いたのですけど・・・」
「あら、トメさんのことかしら?」
 食いついたかぁ
「はいそうです。鈴木トメさんから。亡くなるちょっと前に聞いたのです。それで、評判の良いその方に、お願いしようと思っているのですけど・・・」
嘘八百である。が、目の前のおばさんはこのような嘘に食らいついてきた。
「それなら私よ」
 小太りな体を、(どうよ)とばかりに胸を張るおばさん。
「ええ、そうなのですか。見た感じからしてそうかなって思っていたのですけれど、探していた方が目の前にいらっしゃるとは」
 ここまで来ると嘘にも慣れてくる。
「ほほっ、そうかしら。でも私よ」
 彼女は、ポコンと膨らんだおなかを微妙に揺らしながらしゃべり続けていた。
「そうですか、ではこちらの?」
「ええ、佐々木、佐々木晶子。ここの介護ヘルパーよ。私でよければお引き受けします。それで、どのような介護をご希望ですか?」
ビンゴぉ~。私の勝ちぃ。
「よかったぁ。それじゃあ、金額的な事もありますのでパンフレットか何かあれば頂きたいのですが、それでうちの両親と相談して決めます。あります、パンフレット?」
 最後のこれは、逃げる口実だけれど。
「そうですか、解りました。パンフレットもございますよ。その中に料金表などもございますので、よくご検討下さい」
 彼女は事務机に向かい、パンフレットを手にすると私の前に戻り、それを手渡してくれた。結局、最後の最後まで疑う事無く、おなかを揺らし続けていた彼女。
「はい、それではその時はよろしくお願いいたします」
私は、再び彼女に頭を下げ、さっさと退散した。
これで、顔と名前は確認済み。
残りは、隠し撮り。
とりあえず、近くにあった児童公園の物影に潜み彼女が出て来るのを待つことにした。
しかし、まだ午前だというのにこの暑さ。
翔ちゃんが逃げるのも当然かも。
暑いぞ、前原!って、居ないよね。
・・・・・
もうすぐ熱中症になりかけた頃、彼女が天使の羽から出て来た。すかさず、顔の隠し撮りに成功したが、後30分此処にいたらやばかった。
とりあえず、目的は達成されたから・・・
アイスでも食べてから帰ろう。


作品名:『アフターケア』episode 01 作家名:槐妖