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『アフターケア』episode 01

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(4)占い!?



私達は、車に乗り込むと駅前近くの知人の元へと向かった。
〇〇横商店街の東側に、1番古い雑居ビルがある。
そのビルの階段を2階に上がったところに、これまた雑多な、戦後の闇市かと想わせるほどの商品が並べられるなか。

奥へ、奥へ進んでいくと、突き当たりには、原色のネオンカンで(KAEDE)と銘打って、占い館(楓)が居を構えていた。

入口と思われる場所にはドアがなく、漆黒のカーテンで仕切られている。
中に入ると、深海かと錯覚するほどのインディゴブルー。
6畳程のスペース中央にテーブル、対面には2脚の椅子があり。
占いといえば定番の水晶は、此処には見当たらず。
テーブルの上にあったのは、黒い猫。いや、居た。

「おっ、相変わらず、こちらの千里(せんり)さんはふてぶてしいね」
翔ちゃんは手前の椅子に座ると、此処の飼い猫千里の頭を撫でながら話し掛ける。
私は、この黒猫が少し苦手なので、翔ちゃんの後ろで控えていた。
目の前に座るこのメイド服姿の女性は、これでも一応占い師だ。私と歳はそうはなれていないと聞いたことがある。

その若き占い師は、巷じゃアタルと評判の人だそうな。
「それで、久瀬さんは何をしてほしいと?」
「ああ、この通帳の引き落としがあった場所とそれを行った人物。それが知りたい」
「どうして、そのようなことをお調べに?」
「ああ、実はさ。ここに、ある婆さんの日記がある。これは半年程前に書かれたものらしいんだが。それを読んだとき、面白いことに気付いた。それがココ」
翔ちゃんは、あのおばあさんの日記を指差して、澄んだ目を細める。
そこには、こう書かれていた。


(私が認知症と診断されてから、この日記を書き始めた。それは、担当の先生の奨めもあったのと、病気の進行を遅らせるといった意味も含めてだったが、それが、こんな事になるとは思わなかった。病気と共に暮らし始めて3ヶ月ぐらいの頃。財布に入れた金額と使った金額を記入していたが、何時も、何日かすると日記とあわないことが度々あることに気が付いた。

でも、最初は解らなかった。
私が忘れていただけかも知れないと何度も確かめたけど、私の記憶は既に曖昧なものになっていた。けれど、ある日、おじいさんの形見である短刀が無くなった。まさか、泥棒に遭ったのかと思い。あの人に相談した。だが無下にそんなことがあるはずないと言われた。おじいさんの形見に関しては私の勘違いではない。
写真もある。

日記も読み返してみた。そしてあの人が来た日に限ってお金がなくなることに気付いてしまい。まさかと思い、家にあった通帳なども確認した。やはり、なくなっていた。
お金はいい、けどおじいさんの形見だけは探さないと)


記憶のあるうちにと思って書いたのだろう。文字が走り書きされていた。
そのあとは、意味不明な文章で理解しがたかった。

「これを見ると、どうやら誰かが婆さんの金を抜いた形跡がある。それに、爺さんの形見っていうものも」
「なるほど、興味深い話しですね。それで、久瀬さんは何をしたいのです?」
楓さんは、このあたりのネタに凄く反応する。
事件と聞くとむずむずすると以前言っていたことを思い出す。
「実はそれなんだが、俺はココに書かれた(あの人)を見つけたいと思っている。必死に生きていた80過ぎの婆さんから、なけなしの金を失敬する奴の顔を拝んでみたいんだ」
「拝んでどうすると」
楓さんは妖しくも不気味ともとれそうな含み笑いをすると翔ちゃんに告げた。
「決まっている。アフターケアするだけさ」
「解りました。それでは、お調べします。それと、先程の日記によると短刀の写真もあると書かれていましたが、それはあるのですか」
「ああ、あるにはあったけど、小さすぎてあまりはっきりしないんだよ」
翔ちゃんはアルミ缶に入っていたアルバムも楓さんに見せた。
すると、楓さんはニヤリッと笑い。
「では、こちらもお預かりして、後日久瀬さんにメールで結果をお伝えします。それで、よろしいですか?」
「ああ、頼む」
商談成立といった感じだろうか。
まあ、占い師に頼む内容ではないのだが、
これもいずれ解ることだが、楓さんもかなりの人物ということかな。
それに、楓さんに頼むのが翔ちゃん流なのだ?

 ・・・・・

 (ん?誰か居たような?私の勘違い?)

 ・・・・・


作品名:『アフターケア』episode 01 作家名:槐妖