妖精の布
リクはひねくれ者で乱暴なので、子どもばかりか、大人たちからもきらわれていました。
今日もリクは、だれかに意地悪をしようと外をぶらついていました。
ところがみんなリクの姿を見ると、家に入ってしまいます。
「ちぇ、つまんねえな」
リクは、空き地にやってくると、石ころを拾って手当たり次第に投げました。
昼寝をしていた野良猫は、石が当たってびっくりして逃げていきます。
「あっはっは。ざまーみろ」
リクは大声で笑いました。
「あの、リクさん」
そのとき、後ろから声がしました。
振り向くと、背中に薄い虹色の羽根の生えた女の子がいます。リクはびっくりしました。
女の子は震える声でいいました。
「あなたにお願いがあってきました。妖精の布を探して欲しいのです」
「ようせいのぬの?」
「はい。わたしは春の妖精です。春の準備をしているときに、強い風が吹いてとんでいってしまったのです」
「だったら、自分で探せば」
リクは冷たく言うと、歩き出しました。女の子は必死で追いかけます。
「待って下さい。このままでは、この町が大変なことになってしまいます」
「おれには関係ないね」
「そんなことありません。以前とかわったことがあるでしょう」
リクは立ち止まりました。いわれてみると思い当たることがあるのです。
冬が終わっているのにまだ春が来ていません。花も咲かず、あたかい風もふかず、町中が灰色に見えます。
それに町の人たちのようすもちがっていました。みんなの顔から笑顔が消えて、しかめっ面をする人が多くなったのです。
リクは妖精に聞きました。
「それって、どういうの?」
「うすい透明な布なんです。でも、未完成のままこの人間界に飛んできてしまったので、わたしの眼には見えません。ですからあなたの力が必要なんです」
妖精は泣きべそをかいています。
「見えなきゃどうしようもないじゃないか」
「いいえ、この町に住む、まだ大人になりきっていない年頃の少年の中で、あなたの目にだけ見えることがわかったのです。ですから、あなたにお願いにきたのです」
すると、リクはいつものいじわるな顔になって、言いました。
「ただってわけにはいかないな。あんたの背中の羽根くれる? それならいいよ」
今日もリクは、だれかに意地悪をしようと外をぶらついていました。
ところがみんなリクの姿を見ると、家に入ってしまいます。
「ちぇ、つまんねえな」
リクは、空き地にやってくると、石ころを拾って手当たり次第に投げました。
昼寝をしていた野良猫は、石が当たってびっくりして逃げていきます。
「あっはっは。ざまーみろ」
リクは大声で笑いました。
「あの、リクさん」
そのとき、後ろから声がしました。
振り向くと、背中に薄い虹色の羽根の生えた女の子がいます。リクはびっくりしました。
女の子は震える声でいいました。
「あなたにお願いがあってきました。妖精の布を探して欲しいのです」
「ようせいのぬの?」
「はい。わたしは春の妖精です。春の準備をしているときに、強い風が吹いてとんでいってしまったのです」
「だったら、自分で探せば」
リクは冷たく言うと、歩き出しました。女の子は必死で追いかけます。
「待って下さい。このままでは、この町が大変なことになってしまいます」
「おれには関係ないね」
「そんなことありません。以前とかわったことがあるでしょう」
リクは立ち止まりました。いわれてみると思い当たることがあるのです。
冬が終わっているのにまだ春が来ていません。花も咲かず、あたかい風もふかず、町中が灰色に見えます。
それに町の人たちのようすもちがっていました。みんなの顔から笑顔が消えて、しかめっ面をする人が多くなったのです。
リクは妖精に聞きました。
「それって、どういうの?」
「うすい透明な布なんです。でも、未完成のままこの人間界に飛んできてしまったので、わたしの眼には見えません。ですからあなたの力が必要なんです」
妖精は泣きべそをかいています。
「見えなきゃどうしようもないじゃないか」
「いいえ、この町に住む、まだ大人になりきっていない年頃の少年の中で、あなたの目にだけ見えることがわかったのです。ですから、あなたにお願いにきたのです」
すると、リクはいつものいじわるな顔になって、言いました。
「ただってわけにはいかないな。あんたの背中の羽根くれる? それならいいよ」