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僕は君が好きだった

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「大丈夫、心配無いよ。俺がどうにかして、展望部を復活させてみせる」
 どうやるのかはわからない、でも、何かしなければいけない、そんな気がしてたまら
 なかった。
「智君・・・ごめんね・・・ヒック・・」
 俺は由希を抱きしめた。俺の肩が、涙で滲んでいく。
 しばらくそのままだった。学校のチャイムが鳴るまで、震えが納まるまで、由希の目
 から、涙が消えるまで・・・。
 
          午後4時30分(学校内・放課後)
 
「先生、お願いします、展望部の件、もう一度考えてくれませんでしょうか?」
 俺は放課後、職員室で何度も頭を下げていた。
「しかしなぁ、部員が一人だけでは・・・」
「俺が部員です、それに、展望部が出来てすぐ、俺はそこにいました。東郷さんが証人
 です」
 横にいる副会長の東郷が、一つの本を取り出し、教員に渡した。

「これが、彼ら二人の部活動記録です。日記式になっていますが」
 教員が日誌に目を通す。
「うむ、確かに市ノ瀬君の言葉も書かれている」
「じゃあ・・・」
「しかし、やはり申請書がなぁ」
「がっかりしました。申請申請って、そんなに申請は必要なんですか?無くても今まで
 普通に展望部は活動できてたじゃないですか!誰かが嫌な思いをしているんですか?
 それはただあなたたち教員の問題でしょう、生徒の気持ちを考えたことないんですか?」
 俺はそのまま続ける。
「部長、泣いてましたよ。俺をかばって謹慎食らったあの加藤由希が、あなたたちが
 簡単に展望部を廃止して、傷ついてるんですよ?お願いします、展望部を、どうか
 また復活させていただけませんでしょうか?お願いします!」
 俺は、最後に大きく頭を下げ、横にいた副会長も頭を下げた。
「もういいんじゃないでしょうか、先生」
 関島の声が後ろから聞こえてきた。生徒会長自ら動いた?
「私も、彼らの活動を見ていて、とても廃止できるような部活動には見えませんでしたし、
 生徒から唯一の楽しい活動の場を教員が取り上げるのはどうかと、私からもお願いです。
 廃止を、取りやめてください」
 関島も頭を下げた。教員はわかったと、あわてて3人の頭を上げさせた。
「負けたよ、何か、悪いことしたね。申請書には、君の名前も書いておくよ」
 俺たちは顔を見合わせた。展望部が、復活したのだ。
















       エピローグ 流れ星


      3月16日火曜日午前8時30分(学校・校門)

「快晴快晴!淳、この前お前、生徒会長が感情無いって言ってたけど、関島さんはそんな
 人じゃなかったぜ」
 俺は気分上々で、爽やかな朝の風を受けながら、クラスへ向かう。
「ああ、知ってるよ。副会長から聞いた。良かったな、展望部が廃部にならなくてよ」
 全ての灰汁は取り除いた。あとは、謹慎を受けている由希の登校を待つのみだ。
「加藤なら、さっき体育館にいたぜ、倉庫にでも行ったんじゃねぇか?」
 それを聞いて、俺はクラスを出て、体育館に向かった。
「部長!」
「はうわっ」
 由希は俺の声で驚いて、手に持っていたダンボールを地面に落とした。
「智君、いきなり部長は無いでしょ?慣れてないからビックリしたじゃない。それより、
 このダンボールの山、部室に運んでくれない?展望部としての、今回初の課題よ」
 俺は一度部室から追い出された可哀想な部品たちを、今の展望部室へと運んで行った。
 大方片付いて、由希は一切れの紙のようなものを取り出した。
「これが最後の部品。これが無くちゃ、展望部じゃないよね」
 そういって、コルク式の写真フレームに、いつかのプリクラ写真をピンで留めた。
 無邪気な、二人が写る、写真を。
 
        午後7時30分(裏山・滑走路)
 
「星がいっぱい・・・智君がいなきゃ、展望部は確実に廃部になってた。ありがとう」
「そんな、改まって。俺は、展望部が楽しくて、それが誰かの手で廃部されるなんて、
 気分が優れないだろう?」
 星が幾千も輝く夜空を見上げながら、俺は由希と天体観測を行っていた。
「ねぇ、智君」
 その時、夜空に、一筋の流れ星が走った。
 そうだ、僕は、君が好きだったんだ。
                          終わり
作品名:僕は君が好きだった 作家名:みらい.N