若返りの泉 TWENTY
9 就 職 試 験
1975年前後も就職難だった。
人気職種の求人はかなり少なかったが、この機に乗じて小企業などは求人を増やして人材確保に努めたようであるから、今よりはましだったかもしれない。
高名な論評家が『女子大生亡国論』を唱えると、高名な女性評論家は反論を講じ、それでも女子大生にとっては特に厳しい情勢だった。
学校にテレビ放送局のカメラがやってきて、白衣を着た理系学生が集められた。芝生の上に輪になって座り、就職についての感想などを求められた。ジャージ姿で参加した私は、テレビには映っていなかったが。
このころの採用試験は、4年生の10月から始まった。理系学生にとっては卒論実験に忙しいころで、会社訪問などままならない。
例年なら研究室でのツテがあったが、この年はあいにくだった。
それでも周囲の人たちはのんびりしていた。
どうにかなるさ。
コンピューターはまだまだ大型であった。コンピューター関係の会社を受験し、二次面接に進んだ。
「なぜこの会社を選びましたか?」
「鉄腕アトムに出てくるお茶の水博士が好きで、アトムのようなロボットを作ることに少しでも関われたら、と思っています」
面接官たちはにこにこしていた。
時代が早すぎた。
2月に医療関係の会社に拾われた。
作品名:若返りの泉 TWENTY 作家名:健忘真実