君ト描ク青空ナ未来 --完結--
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ノックの音がかすかに聞こえたような気がした。
「樹?大丈夫?」
ドアが開く音とともに、敦也の声。
押さえつけられた体はそのままだけど、口は離された。
助かった、と思った。
「敦也、邪魔しないで」
樹が敦也のほうを見もせずに、言った。
そして答えが返ってくるまでにはしばらく時間がかかる。
「わかった。でも右手はあんまり動かさないようにね」
わかったって・・どういうこと?
「敦也さん・・?」
敦也のほうを見ても、目が合うことはない。
「外にいるから」
それだけ言って、また外に出た。
「残念だったね。大好きな敦也からも助けてもらえなくて」
服のすそから、手が入ってきた。
「やめてくださいっ・・!」
必死でソファから逃げようとするけれども上手く行かない。
「大人しくしてればちゃんと気持ちよくしてあげるくらいはするよ」
服の中に入ってきた手が胸を撫でる。
「や・・だ・・・!」
自分の体を人に触られるのが嫌だ。
必死で暴れるけれども、自分より一回りも大きい相手はびくともしなかった。
「ここで感じないの?」
胸の突起を指でつままれて、弄られてる。
「やめてくださいっ・・!!」
「何も感じないってことは本当にしたことないんだ?」
ずっとそこだけを弄られて、嫌でも意識はそっちに集中してしまう。
「少しやりなれれば結構感じるようになると思うんだけど」
逃れようともがくにも苦しくなってきた。
「そうやって大人しくしてればいいのに」
目を閉じたまま胸の突起を弄られ続けていると、だんだんと自分がどういう状況だかわからなくなってくる。
この人が言うように、触られると本当に変な感覚が湧いてくるような気もしてくる。
「少しはくるようになった?」
ぎゅっと爪をたてて強く摘まれた。
「・・っ・・!!」
痛みに声をあげると共に、変な感覚が体の中を駆け抜けた。
「苛められるの好きなの?」
樹の片足が空流の足の間に入る。腿で空流の足の間を上下に擦る。
「・・やだっ・・!」
経験したことのない感覚に気持ちの悪さが全身を支配する。
逃れようとまた必死にもがくけれども、それは叶わない。
「あばれないでって言ってるでしょ。優しくしてあげてるんだからさ」
「やだ・・・やめてください・・・!」
「俺を拒むんなら、また倉庫の中でしばらく暮らすことになるよ?」
極寒と灼熱しかない地獄と、人に身体を弄られる気持ちの悪い感覚。
天秤にかけるなんて無理。
「誠司・・さん・・・」
頭に思い浮かぶのは、助けてくれた人。
もう二度と会えないかもしれない。
でも大好きだった・・・大好きな人。
呼べばまた助けに来てくれるような・・・そんな気がしてた。
「空流、呼びましたか?」
そう、優しい声でそう言って・・・苦しいときには手を差し伸べてくれる・・・あなた。
確かに、その声が聞こえた気がした。
第二部 FIN
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-