君ト描ク青空ナ未来 --完結--
7
別荘についたのは、もう夜遅く。
後部座席の少年はまだ目覚めない。
「喜田川、医者を呼んでくれ」
「はい」
客間の寝室に運んで、ベッドに横たえる。
すぐに医者が来た。
医者が伝えたことは、栄養失調による衰弱と右足の疲労骨折。
アスファルトを裸足で走ることで傷ついたのか足の裏は傷だらけ。
倒れてからも進もうとしたのか、膝も肘も手のひらも細かい傷だらけだった。
医者が服をぬがして見ると、その体にあるのは無数の痣。
見えたところだけでも結構なあざなのに見えないところはもっと酷い。
繰り返し何度も殴られたような、そんな傷跡。
「この子はあなたの弟さんですか?」
「いえ、道で倒れていたのです。」
「そうですか。おそらく、虐待にあっていたのでしょうな。目が覚めたら児童相談所に相談する事をお勧めします」
「はい、どうもありがとうございました」
医者が帰ったあとに、少年を風呂に入れた。
外を走っただけにしては体が汚れすぎだし、髪も伸びすぎている。
栄養失調の少年はその身長にしてはやけに軽かった。
少年の体を磨き終わって、ベッドへ横たえる。
「磨けば綺麗になるものだな」
その少年に感じたものは無垢。
自分にはとうに失われたか、初めからもっていなかったもの。
目を開けたらどんな瞳をしているのだろう。
なぜ、自分はこの少年に興味をもったのだろう。
この少年が目が覚めれば、解決するのかもしれない。
それまでは手元に置いておきたい。
コンコン
「はい?」
「喜田川です」
「入れ」
「誠司さま、申し訳ありません。明後日は休暇のはずでしたが、急遽、筆頭株主が誠司さまにお会いしたいと申しております。どうしてもその日でなければダメだとのことですが・・・。」
「・・・あの人か、やっかいだな」
食わせ物で有名な人物だ。
汚い手でうちの株を集めて、筆頭株主にまでなった奴。
「いいだろう、会ってやる。時間と場所が決まったら教えてくれ」
「はい」
明後日か。
準備も必要だというのに急な申し出は困る。
準備たのめに、部屋に戻ることにして、その少年の傍から離れた。
少年はまだ目を覚ぬまま、数日が過ぎた。
ついに筆頭株主に会う日がやってきて、この別荘の管理を任せている使用人の加川を残し、秘書の喜田川と出かけた。
少年が目を覚ましていたのは、仕事を終え、ここへ帰ってきた時だった。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-