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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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38

「なんで・・・」
結局、何もなしで行っちゃうなんて・・・。
「余計なこと、しないでよ」
余計なことなんて、したつもりない。
「だって、兄弟なのに・・・」
「余計なことだって言ってるの、君は何もわからないんだから黙ってて」
「でも・・・」
「黙ってって言ったのが聞こえなかったのっ?」

激しい口調でそういわれたらもう何も言えなかった。

「もう喧嘩?気が合わないみたいだな」
軽いノックのあと返事も待たず、そんな声とともにドアが開いた。
「って樹、どうした?大丈夫か?」
ドアも閉めずに敦也さんは樹さんへと駆け寄った。
これが、正しい姿だと思うのに・・・。
「なんでもない、ちょっとぶつけたりぶつかったりしただけ」
「・・・にしてもこんな怪我は・・・」
「なんでもないってば。ちゃんとドア閉めてきてよ」
敦也さんに目で合図をして、ドアは僕が閉めにいった。

「ほっとけば治るから」
敦也さんが樹さんの背中を触っていく。痣があるところを中心に骨を調べてるみたいだった。
「俺の所見だと骨には以上なさそうだな。確かにこの怪我ならほっとけば問題ないだろうけど・・・かなり痛かっただろ?」
「・・・別にたいしたことない」
「意地はるなよ、どうしたんだ?」
「・・・なんでもない」
「お前が話さないなら、空流君に聞く」

敦也さんがこっちを向いた。

「空流くん、なにがあったの?」
「やめてよっ」
敦也さんと樹さんがそう言うのが同時。
「君はもう向こうの部屋に行って」
奥の部屋が指差された。
「樹、少し落ち着いて。俺も悪かったから。何があったかは今は聞かない」
そう約束すると樹さんは黙った。

「それより二人とも、というか空流くん、昨日は何も食べずに寝ちゃったみたいだけど何か食べた?」
そう聞かれてほとんど丸一日何も食べてないことに初めて気がついた。
とても食べる気分じゃないけど、体は空腹を訴えている気がする。
「お昼には少し早いけど、いろいろ買ってきたから食べて。樹も」
敦也さんが持ってきていた袋からがいろいろと取り出す。
この高級感あふれる感じはスーパーで売ってるやつじゃない。
「うちと懇意にしてるデパートのだから、いろいろおまけしてもらえたよ。樹の好きなものも買ってきたから」
そう言われて樹さんの体が起きた。シャツを着ようとしてるけど、痛そうに眉間にしわが寄る。
「あの・・大丈夫ですか?」
少しでも支えようと思って手を出したけれどもそれはあっさりと無視された。

「俺は食べてきたから、二人で食べなよ」
そう言って敦也さんはたんすによりかかって肩膝をついて座った。
ローテーブルを挟んで向かいに僕と樹さん。
目の前に並ぶのはたぶん口に入れたことも無いような高級食材を駆使した惣菜。
「なんか・・・すごいですね。デパートのなんて食べたこと無いです」
「そんなことないでしょ。もっといいもの食べてた時期があるはずだよ」
遠まわしだけどそういわれて気がついた。
誠司さんのところにいたときは、サラダの一つ一つの食材から味がしたっけ。
にんじんが甘いって初めて知った。

なんだかすっごい昔な気がするけど・・・今もきっと心配をかけてるんだろう。
それを考えると胃がいたい。

「食べなよ。敦也が買ってきてくれたんだから」
さっきの言い争いから初めて樹さんが僕に口を開いた。
「はい、いただきます」
食べ始めたのはいいけれど、一度考え始めてしまったらやっぱり誠司さんのことが頭から離れなくて、とても美味しいだろう惣菜の味もほとんどわからなかった。