君ト描ク青空ナ未来 --完結--
19
千晴さんたちのところを出てから、車は単調に走り続けた。
僕は助手席に座っていて、内田さんは運転席。
「道路はそんなに混んでないようですし、早めにつきますよ」
「はい、ありがとうございます」
道路標示を見ていると、東京の方へ向かっている。
「あの、俊弥さんは東京にいるんですか?」
「はい、鷹島さんも今は東京へお帰りになってると聞きました」
誠司さんも東京にいるんだ・・・。その情報は初めて聞いた。
いつ東京に帰ったんだろう。
加川さんには会えないのかな・・・。
「少し時間がありますから、お眠りになっていても大丈夫ですよ」
「あ、いえ。大丈夫です」
運転している人の横で寝るっていうのはなんか悪い気がするし。
「そうですか?でも車に乗っていると眠くなるものですからね」
いつ寝ても良い、と遠まわしにそう言ってくれたのがわかる。
優しさを配るのが上手だ。
「よかったら、どうぞ。喉がかわいたら飲んでください」
水の500mlペットボトルを差し出された。
「ありがとうございます」
のどは渇いていなかったけど、受け取った手前一口だけ飲んで、蓋をした。
またしばらく無言のまま走り続ける。
そうしているうちに段々眠くなってきた。
車に乗ってると眠くなりますから。
本当だ。
生まれた時から家に車なんてなかったから、ほとんど車に乗ったことがない。
それでも、俊弥さんと乗ってるときは眠くならなかったのに。
あ、でもあの時はたくさんのことを話していたから。
そうして、寝れるほど安穏とした気分ではなかったから。
誠司さんに会えるという安心感がうとうとする原因なのかもしれない。
それに昨日は興奮していて眠れなかった。
遠足の前の日に眠れない子供みたいだけれど。
寝不足と安心感と車のゆれが心地よい眠りへといざなってくれた。
「おやすみなさい」
内田さんがそういってくれたのが聞こえたけれども返事が出来ずに目を閉じた。
目を閉じきって意識が沈みきる直前、携帯電話の音が鳴ったのが聞こえた。
「もしもし?」
となりで、携帯絵電話で話しているのが聞こえた。
「ああ、万事上手くいった。だたやり方がやり方なだけに時間の問題だ。・・・ああ、追ってはきていないようだけど。ただ、鷹島の若とは何度か会ったことがあるからな。俺の顔が割れてなければ良いけど・・・とりあえず例の場所へ向かってる。1時間もあれば着く。当の本人は助手席でお休み中だ。薬がよく効いたみたいで助かった」
時間の問題・・・?
追ってきている・・・?
薬・・・?
よく理解ができない言葉の羅列を深く考えるまもなく、意識が沈んだ。
どのくらい眠っていたのかはわからない。
目が覚めると、部屋の中にいた。
頭がガンガンしてて、とても体が重い。
ベッドに寝ているけれども、ベッドからは起き上がることができなかった。
きっと、もう一回眠ればよくなると思ったけれど、無理して体を起こした。
寝てる場合じゃない。
きっと、俊弥さんと誠司さんがドアの向こうに待っていてくれる。
車の中で眠る間際に聞いた言葉を都合よく無視して、ベッドから立ち上がった。
ドアまでおぼつかない足取りでたどり着き、ドアノブに手をかける。
ガチャ、と音を立てただけでドアノブはほとんど動かなかった。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-