小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|54ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

16

しばらくの沈黙の後、俊弥がいきなり吹き出した
「俺もすごいもんだよな、相手を論破することにかけてはかなり有名な鷹島の若君を黙らすなんて」
いつもの冗談を言うときのような口調で俊弥がいった。
「今はそういう問題じゃないだろ」
「はいはい、まあろくに恋もしたことのないお前にきいても無駄なことくらいわかってるよ。空流君のこと、そういう意味で好きなんだろ?」
「・・・私が、空流を?」
「そう、それ以外に何が?」
「・・・ありえない。だって私も男で空流だって・・」
「そんなの関係ない。もしも、お前がいいっていうんなら俺が空流君に手だすけど?」
「え?」
「誠司のことなんか忘れなよ、って優しく慰めて、抱きしめてそのまま成り行きでいろいろしちゃえると思うんだけどな、今なら」
「やめろ!」
考える前に、口がそう言っていた。
「なんで?俺がそうしても別に誠司は何も困らないんじゃない?」
相変わらずの意地の悪い口調。
「わかった、認めればいいんだろう。正直自分でもまだよくわからないけど、特別に思ってることが確かにわかる」
「・・・まあ及第点か」
そう誠司が呟いた後、いきなり言った。
「来週の月曜日、空けられるか?」
来週の月曜日か・・・午前中には大切な会議があったけれど、午後には特にこれといって大切な予定は入っていなかったはず。
「午後なら大丈夫だと思う」
「じゃあ月曜の午後、家にいてくれよ、空流君に会わせてやる」
「え?」
「実はもう昨日のうちに来週の月曜日に誠司にあわせるって約束してきたんだよな」
「・・・なんでそれを早く言わないんだよ」
「早く言ったらありがたみも何もないだろ?」
「だからそういう問題じゃないだろ」
あまりの出来事にため息をつく。

「俺は、今回こんなふうな形であれ空流君と誠司が距離をとってみたことは良かったことだと思うよ」
突然の真剣な口調。
「なぜ?」
「近くにいないほうが、たくさん考えることができるだろ?相手が自分にとってどういう存在なのか。自分は相手にとってどういう存在なのか」
「それはそうだが」
「離れてみることも大切なんだ。空流君と誠司みたいに一方の危機的状況で出会った場合は特に関係について大いに悩んでみるってことが必ず必要になる」
「・・・難しいな」
「言葉はね。内容はすごく簡単なことだよ。どれだけ誠司にとって空流君が必要なのか。またはその逆を考える機会がなければ相手の大切さがわからない、こういうこと」
離れている時間は、相手の大切さをかみ締める時間。
つまりは、そういうこと。昔の恋愛小説にも良く出てきた。
「おかげさまで、とてもよくわかったよ」
俊弥へ皮肉をこめてそういう。
「だから、今回のこと、別に俺のせいだけじゃないってわかっただろ?あとはお前が話すしかないんだよ」
「わかった、なにを言えるかどうかはまだわからないけど、話せることは話してみようと思う」
それが今、自分にできる精一杯のこと。
「それから、もう一つ」
「ん?」
「無理をするな」
放たれたのは、この上なく意外な言葉。
「珍しいな、心配してくれるのか?」
「いや。俺はお前の心配なんてしないよ。してるのは空流くんの心配」
「どういう意味だ?」
「お前が彼のために仕事に都合をつけることが、彼の負担になってるってことがわかるか?」
「・・・空流の負担に?」
「よく思い出してみろよ『これ以上迷惑はかけられません』って、そういう意味だろ?」
「確かに、そうだな」
相手のためにしていることが、相手のためになっているとは限らない。
「まあ、そういった直後に言うのもなんだけど、来週の月曜日はなんとかしてくれ」
「それは大丈夫だと思う」
「頼むな」
そういって微笑んだ俊弥の顔はなんだかつかれきっていた。
「疲れてるのか?そっちこそ無理はするなよ」
そう忠告してやる。
「いや、疲れたのは今までだよ。誰かさんの電話攻撃と元クライアントとの希望で板ばさみのつらい日々もこれで終わりかと思うとほっとしたんだ」
その言葉には、何も言い返せなかった。


「それじゃあ来週の月曜日に」
「ああ、頼むよ」
「鷹島邸につく前に電話する」
「わかった、じゃあまた」

そう言って、俊弥と別れた。

月曜日が待ち遠しい。

そんな感覚は久しぶりだった。