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律姫 -ritsuki-
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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第四部 Drawing the future of blue sky with you




9月に入っても、相変わらずうだるような暑さは続いていた。
新しい制服は夏服。鞄も靴も全て新品だ。
「入学、おめでとうございます。帰ってきたら入学祝いをしましょうね」
誠司は朝だけ仕事を都合をつけ、編入初日の空流についてきてくれた。だから今日だけは誠司の車で登校している。
一般生徒は8時半までに登校し、今日は始業式とHRのみで下校。空流は帰りのHRで紹介されることとなっているから、始業式が終わりに近づく10時ごろに登校することとなっていた。
誠司と共に校長室へ行くと、そこには校長先生と葉山先生ともう一人・・いた。
「おはようございます」
挨拶をしながら入ると、先生方もにこやかに挨拶を返してくれる。
「おはようございます。私と会うのは、初めてですね。この学園の理事長をしています上條です」
そういってにっこりと笑った男性はまだとても若かった。おそらく誠司と同じくらい。
「上條さん、いろいろご配慮いただいてありがとうございました」
「いいえ、こちらこそ。彼のような優秀な学生を迎えることが出来て嬉しく思ってます」
とりあえずそこで挨拶は終って、全員着席。
「先生方も、格別のご配慮をいただきましてありがとうございます。彼のことをどうかよろしくお願いします」
誠司がそう言ったのに合わせ、隣の空流も頭を下げた。
「頭を上げてください、鷹島さん。寺山君はこの学園全体で守ります。担任の葉山先生はとても優秀な先生ですのでご安心ください」
紹介された葉山先生が少し頭を下げた。
「1年3組担任の葉山です。寺山君とは編入試験のとき以来だね」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
しばらく挨拶や雑談をしていると、廊下がざわざわと騒がしくなり始めた。きっと始業式がおわったのだろう。
「それでは、そろそろ行こうか。寺山君」
葉山先生がそう切り出して、席を立った。
誠司に見送られながら校長室を出た。

教室のなかからざわざわと声が聞こえてくる廊下を先生のうしろについて歩く。
「うちは1学年3クラスしかないから、たぶんすぐに全員覚えられると思うよ」
まず1組の前をとおりすぎて、次に2組の前。
2組の教室の後ろのドアがあいてて、何者かと数人に注目された。
何も悪いことはしんないのに、それだけで居たたまれない。
「ここが3組。すぐに呼ぶから、そうしたら入ってきてね」
それだけ言って、先生だけが教室のなかへ入った。
ざわついてた教室がそれだけで静かになる。
いくつかの連絡事項を伝達した後に、先生が転校生を紹介すると切り出した。
「寺山君」
教室のドアが開けられて、中へはいる。29人の視線がいっきにこっちをむいた。
昨日自己紹介の練習をこっそりしてたのを思い出して、その通りにしゃべった。
「寺山、空流です。家の都合で今学期からこの学園に通うことになりました。わからないことだらけですので、いろいろ教えてください。よろしくお願いします」
自己紹介の最中に先生が名前を黒板に書いてくれた。空流という振り仮名まで振ってくれている。
自己紹介が終ると、やっとクラスの人たちの顔をみることができるくらい落ち着いた。
その中に、やけにこっちを見つめてくる瞳がある。
不思議におもって見返すと、ばっちり目があった。よく見ると、その顔は見覚えがある・・・。
「寺山っ!」
目が合って確信を得たのか、その瞳の持ち主は椅子をガターンと豪快に後ろに倒して、立ち上がりながら叫んだ。
「と、戸部・・?」
戸惑いながらそう呼ぶと、コクコクと大げさに頷いた。
「うお、久しぶりー!」
周りの注目おかまいなしにそう声を上げる戸部を先生が宥めた。
「まあ感動の再会はあとにして、とりあえず寺山君の席は守屋君の隣ね」
名前を呼ばれた彼は、軽く手を上げてくれた。丸い眼鏡をした真面目そうな人で、目が合うとちょっと恥ずかしそうににっこりと微笑んでくれた。
席につくと、先生がまた話を始めて連絡事項をいくつか話したら終わりになった。
起立、礼、さようなら、と挨拶をして、各々が動き出す。
ちらりと横をみると、隣の席の守屋君と目があった。
「寺山君?僕は守屋圭介。よろしくね」
「えっと、守屋君?こちらこそよろしく」
微笑んで自己紹介をしてくれて、こちらも同じように微笑み返す。
「圭介でいいよ」
「あ、僕も空流って呼んで」
「じゃあ、空流。わからないことあったら、何でもきいて。ところで、真志(まさし)と知り合いなの?」
圭介がそういうと、当の本人である戸部真志がこちらへ来た。
「寺山じゃん、前にお前のアパートの前であって以来だな」
以前すんでいたアパートにいったとき、大家さんの家の前で偶然会って、インターホンを押してくれた中学校の同級生。
空流は中学生のときは母子家庭で、彼は父子家庭だったから通じ合うところがあった。けど、戸部は部活人間だったし、クラスも1年のとき以外は違ったから二人で話す機会はそう多くはなかった。
「戸部、あのときはありがとうね」
「気にすんなって。また同じクラスになれてよかったよ。仲良くしような」
そういってニッカリと笑う彼は、中学校のときと変わってない。背が伸びて体格はよくなっているけれど、中身はそのままで安心した。
「中学校のとき、もっと話したいって思ってたんだ。なんか、お互いいろいろ大変だったしな。これからは俺も空流って呼ぶから俺のことも真志って呼べよな」
「わかった、真志」
「よし!」
知り合いがまさか、ここにいるとは思わなかっただけに驚いたけれども、戸部真志がここにいてくれたことの安心感は空流にとってはかなり大きなものとなった。
「ちょっと待ってよ。僕には何も説明なしなの?真志」
おちついたところで声をかけてきたのは圭介。
「まあ、詳しくはのちのち。空流、圭介はマジで頼りになるから、わかんないことあったらなんでもきくといいぞ」
「わかった。何かわからないことあったら圭介にきくね・・・っていっても今は分からないことしかないんだけど」
「転校初日じゃそうだよねー。校舎はもう見たの?」
「全然。校舎もだし、明日の授業がどこから始めるのかも全然」
「あー・・・そんじゃ、まず案内からだな。圭介も一緒に行こうぜ」
「うん。真志は部活は?」
「今日は午後から。だからどうせ午前中は暇でさ。で、学食で飯食べて、俺は部活にいき圭介は空流に明日からの授業について教えるってどう?」
「僕はいいけど、肝心の空流の予定をきかないと」
「二人がいいなら、お願いしたいな」
「おうよ。まあ、自分で言うのもアレだけど、俺は勉強については全く役に立たないから!」
「胸を張っていうなよ。でもまあ、確かに勉強のことについては真志よりは僕の方が色々答えられると思うよ。でも、教えるっていっても今日は教科書もってきてないから・・・どうしようか」
「あ、俺のつかっていーぜ。ロッカーにぜーんぶ置き勉だからなんでもある。はいよ」
と手渡されたのは鍵。
「まあ適当になんでも使ってくれ」
それを言う真志はちょっと誇らしげだけど・・・
「ぜんっぜん威張れることじゃないと思う・・」
それを言った空流の声と全く同時に圭介も同じことを言って、笑いあった。

仲良く出来そうな友達が見つかって、安心した。