VARIANTAS ACT13 背負い
Captur 1
ソルジャーの首を捩切り、胴を貫き、ナイトの腕を折り、膝を砕き、叩き潰す。
踊るように。
流れるように。
ヴァリアントとの熾烈な戦闘。
まるでビデオゲームを見ているような、一方的な破壊。
EPCにグラビティーナックル。
グラビティードライバーによる、常識を超えた高機動戦闘。
彼はまるで、その戦場に溶け込むかのように闘い続ける。
前方から強烈な閃光。
ソルジャーの長射程砲による遠距離砲撃。
彼は、着弾するビーム全てを回避し、EPCを連射。
ソルジャーの戦列を蹴散らし、破壊する。
フラッシュ。
敵部隊最奥部に、通常とは異なる高エネルギー反応を感知。
質量、大。
上級機種、[ヴァリアント・ガーズマン]を確認。
戦闘能力、極めて高。
当機[リセッツクロウ]との戦闘能力を比較、検証。
結論。
危険は有るものの、戦闘に支障なし。
要因。
パイロットの特異な戦闘能力、グラビティードライバー、EPC、及び最新鋭戦闘ソフトウェア。
「大佐」
「何だ」
「敵部隊最奥部に、ガーズマンを捕捉しました」
「何か問題でも?」
「いえ、何も問題はありません。ただ…」
「ただ…?」
「…いえ…何でもありません」
エステルは心の中で呟いた。
「(あなた本当は泣いているんですね…心の中で泣きながら、必死に涙を堪えて…)」
機体は更に、ヴァリアントの群れの奥へ。
すかさず、5機のソルジャーが高速で接近してくる。
「敵機接近」
「邪魔だッ!」
交差する機体。
ソルジャーが一瞬で鉄屑に変えられる。
部隊最奥部へ突入するリセッツクロウ。
機体は更に奥深く。
部隊最奥部、ガーズマンのもとへ。
************
水蘭からヘルメットを通じて彼の網膜に映し出される風景。
焼けた地面。
依然、群を成す敵。
単機、刀一つと己の技量だけで敵に立ち向かう彼に、仲間からの援護など存在しない。
独立無援の恐怖。
極度のストレス。
金切り声を上げる神経を、大きな深呼吸で黙らせ、押さえ付ける。
それでも軽減できない、生体と精神にのしかかる重圧は、次第に彼の身体機能を蝕んでいく。
上昇する血圧と心拍数。
急性過呼吸症。
民間人…
それもほんの少年で、訓練も何も受けていない普通の人間なら、当たり前の事。
傷だらけの機体。
白兵戦闘のみの水蘭に対し、ミサイルやビームカノン等、満身創痍の機体に加えるには過剰とも言える程の、各種重火器による応報。
その攻撃の中でも彼は、数十機のソルジャーと、一機のナイトをたった一人で破壊してきた。
しかし、それもここまでだろう。
「…限界…か…」
膝を突く水蘭。
視界に混じるノイズ。
オーバーヒート寸前のアクチュエーター。
左腕は砕け、装甲の切れ目からあちこちで火花が散っている。
「ダメです、若様!」
彼女の叫ぶ声。
春雪の声が遠のく。
薄れゆく意識。
敵機が接近してくる。
もはや恐怖は感じない。
「ごめん、春雪…所詮…僕の修行不足さ」
一斉に打ち掛かるソルジャー。
温かい液体にたゆたうように、彼はゆっくり目を閉じる。
あれ…?
おかしいな…
なんでこんなに静かなんだろう…
それに…
なんで…
何で僕…
まだ生きているんだろう…?
彼の目に映ったのは、水蘭の目の前に立ち塞がる一機のHMA。
赤銅色の装甲に身を包み、左腕に内蔵型の重火器を。そして右腕には、巨大なパイルバンカーを装備した、HMA‐h2カスタムメイド機。
「…! あッ…ああッ!?」
HMAのパイロットが叫ぶ。
「マッスルバスター一番星! シェーファー02・ロンギマヌス! 一足遅れて登ッ場ォ!」
水蘭の前に立ち、大見えを切るビンセントのロンギマヌス。
その周囲には、ソルジャーの残骸が散らばっていた。
「サン…ヘドリン!?でもこの機体は…」
ロンギマヌスから水蘭へ、回線接続。
「おい民間機、乗っているのは誰だ!?」
「え!? ああっ! はい、僕はこの機体のテストパイロット、菊地一刃です」
「んげぇ! 若旦那!?」
「その声はやっぱりビンセントさん!?」
ビンセントがコクピットの中でのけ反る。
「確かあなたは死んだって…!」
「そっ! それには深~い訳が…」
「ビ、ビンセントさん!後ろ!」
「ぬっ!?」
ロンギマヌスへ襲い掛かるソルジャー。
その時、一条のビームがソルジャーを貫き、爆ぜた。
「遅えぞ!レイズ!」
ビームランチャーを構え、全身に大量の武器と弾薬を装備した、レイズのラッシュハードロング。
レイズがぼやく。
「ビンセントさん…何で僕にだけこんなに武器持たせるんですかぁ?」
ビンセントは彼に答える。
「俺はスマートなのがいいの!」
「まったく…勝手な事ばっかり言わないで下さい…よっ!」
レイズは、ビームランチャーを100mmガトリングに持ち変えると、それをソルジャーの群れの中に斉射した。
爆炎が飛び散り、噴煙が巻き上がる。
「緊急指令で、すっ飛んで来てみりゃあ、もうこんな状態になってやがる…まぁその為の“俺達”なんだけどよ…」
ビンセントはそう言って、マシンカノンのマガジンを換えた。
「若旦那、これからは“俺達”の仕事だ! 若旦那には悪いが、後は任せてもらうぜ!」
スラスターを吹かし、ロンギマヌスが地面から浮く。
「ビンセントさん!」
一刃がビンセントを呼び止める。
「ん?」
「御武運を!」
ロンギマヌスが、水蘭に向かって親指を立て、ホバー走行へ移った。
ラッシュハードロングの横に立つロンギマヌス。
彼はメインスラスターのノズルを絞り、パワーを溜め込む。
レイズがビンセントに問う。
「お知り合いだったんですか?」
彼が答える。
「仕事でちょっとな」
無線をサンヘドリン本部へ。
「本部、情報にあった試験機を保護した。これより敵部隊の殲滅に入る!」
ビンセントが咆る。
「行くぜぇ!レイズ!」
「了解!」
メインスラスターが、莫大な推力を開放し、ロンギマヌスを凄まじい速度で押し出す。
機体はソルジャーの群れの中へ、真っ直ぐ向かって行った。
Captur 2
部隊最奥部のガーズマンに近付くにつれて、更に熾烈を極めていく敵の攻撃。
グラムは、今起きている戦闘に全神経を集中させている。それ以外に、注意を割く余裕も必要も無い。
突然彼は、自分が敵の射線上にいる事を感じ、機体を大きく機動させる。
「1時方向から高エネルギー反応」
巨大なビームが、機体を擦過する。
重力壁を擦過面の一点へ。
巨大なビームパルスから機体を守る。
並の機体ならば、側を通過しただけで装甲が焼け焦げるほどの大出力ビーム。
ガーズマンが放った、ポジトロンビームカノン。
光条が通過し、遥か後方で巨大な火球が咲く。
彼は機体を大きくライドさせ、EPCを連射。
突然、ナイトやソルジャー達が、ガーズマンの前に踊り出て盾になる。
ガーズマンがミサイルを放った。
「ミサイル接近、数20。シグネチャホーミングです」
ソルジャーの首を捩切り、胴を貫き、ナイトの腕を折り、膝を砕き、叩き潰す。
踊るように。
流れるように。
ヴァリアントとの熾烈な戦闘。
まるでビデオゲームを見ているような、一方的な破壊。
EPCにグラビティーナックル。
グラビティードライバーによる、常識を超えた高機動戦闘。
彼はまるで、その戦場に溶け込むかのように闘い続ける。
前方から強烈な閃光。
ソルジャーの長射程砲による遠距離砲撃。
彼は、着弾するビーム全てを回避し、EPCを連射。
ソルジャーの戦列を蹴散らし、破壊する。
フラッシュ。
敵部隊最奥部に、通常とは異なる高エネルギー反応を感知。
質量、大。
上級機種、[ヴァリアント・ガーズマン]を確認。
戦闘能力、極めて高。
当機[リセッツクロウ]との戦闘能力を比較、検証。
結論。
危険は有るものの、戦闘に支障なし。
要因。
パイロットの特異な戦闘能力、グラビティードライバー、EPC、及び最新鋭戦闘ソフトウェア。
「大佐」
「何だ」
「敵部隊最奥部に、ガーズマンを捕捉しました」
「何か問題でも?」
「いえ、何も問題はありません。ただ…」
「ただ…?」
「…いえ…何でもありません」
エステルは心の中で呟いた。
「(あなた本当は泣いているんですね…心の中で泣きながら、必死に涙を堪えて…)」
機体は更に、ヴァリアントの群れの奥へ。
すかさず、5機のソルジャーが高速で接近してくる。
「敵機接近」
「邪魔だッ!」
交差する機体。
ソルジャーが一瞬で鉄屑に変えられる。
部隊最奥部へ突入するリセッツクロウ。
機体は更に奥深く。
部隊最奥部、ガーズマンのもとへ。
************
水蘭からヘルメットを通じて彼の網膜に映し出される風景。
焼けた地面。
依然、群を成す敵。
単機、刀一つと己の技量だけで敵に立ち向かう彼に、仲間からの援護など存在しない。
独立無援の恐怖。
極度のストレス。
金切り声を上げる神経を、大きな深呼吸で黙らせ、押さえ付ける。
それでも軽減できない、生体と精神にのしかかる重圧は、次第に彼の身体機能を蝕んでいく。
上昇する血圧と心拍数。
急性過呼吸症。
民間人…
それもほんの少年で、訓練も何も受けていない普通の人間なら、当たり前の事。
傷だらけの機体。
白兵戦闘のみの水蘭に対し、ミサイルやビームカノン等、満身創痍の機体に加えるには過剰とも言える程の、各種重火器による応報。
その攻撃の中でも彼は、数十機のソルジャーと、一機のナイトをたった一人で破壊してきた。
しかし、それもここまでだろう。
「…限界…か…」
膝を突く水蘭。
視界に混じるノイズ。
オーバーヒート寸前のアクチュエーター。
左腕は砕け、装甲の切れ目からあちこちで火花が散っている。
「ダメです、若様!」
彼女の叫ぶ声。
春雪の声が遠のく。
薄れゆく意識。
敵機が接近してくる。
もはや恐怖は感じない。
「ごめん、春雪…所詮…僕の修行不足さ」
一斉に打ち掛かるソルジャー。
温かい液体にたゆたうように、彼はゆっくり目を閉じる。
あれ…?
おかしいな…
なんでこんなに静かなんだろう…
それに…
なんで…
何で僕…
まだ生きているんだろう…?
彼の目に映ったのは、水蘭の目の前に立ち塞がる一機のHMA。
赤銅色の装甲に身を包み、左腕に内蔵型の重火器を。そして右腕には、巨大なパイルバンカーを装備した、HMA‐h2カスタムメイド機。
「…! あッ…ああッ!?」
HMAのパイロットが叫ぶ。
「マッスルバスター一番星! シェーファー02・ロンギマヌス! 一足遅れて登ッ場ォ!」
水蘭の前に立ち、大見えを切るビンセントのロンギマヌス。
その周囲には、ソルジャーの残骸が散らばっていた。
「サン…ヘドリン!?でもこの機体は…」
ロンギマヌスから水蘭へ、回線接続。
「おい民間機、乗っているのは誰だ!?」
「え!? ああっ! はい、僕はこの機体のテストパイロット、菊地一刃です」
「んげぇ! 若旦那!?」
「その声はやっぱりビンセントさん!?」
ビンセントがコクピットの中でのけ反る。
「確かあなたは死んだって…!」
「そっ! それには深~い訳が…」
「ビ、ビンセントさん!後ろ!」
「ぬっ!?」
ロンギマヌスへ襲い掛かるソルジャー。
その時、一条のビームがソルジャーを貫き、爆ぜた。
「遅えぞ!レイズ!」
ビームランチャーを構え、全身に大量の武器と弾薬を装備した、レイズのラッシュハードロング。
レイズがぼやく。
「ビンセントさん…何で僕にだけこんなに武器持たせるんですかぁ?」
ビンセントは彼に答える。
「俺はスマートなのがいいの!」
「まったく…勝手な事ばっかり言わないで下さい…よっ!」
レイズは、ビームランチャーを100mmガトリングに持ち変えると、それをソルジャーの群れの中に斉射した。
爆炎が飛び散り、噴煙が巻き上がる。
「緊急指令で、すっ飛んで来てみりゃあ、もうこんな状態になってやがる…まぁその為の“俺達”なんだけどよ…」
ビンセントはそう言って、マシンカノンのマガジンを換えた。
「若旦那、これからは“俺達”の仕事だ! 若旦那には悪いが、後は任せてもらうぜ!」
スラスターを吹かし、ロンギマヌスが地面から浮く。
「ビンセントさん!」
一刃がビンセントを呼び止める。
「ん?」
「御武運を!」
ロンギマヌスが、水蘭に向かって親指を立て、ホバー走行へ移った。
ラッシュハードロングの横に立つロンギマヌス。
彼はメインスラスターのノズルを絞り、パワーを溜め込む。
レイズがビンセントに問う。
「お知り合いだったんですか?」
彼が答える。
「仕事でちょっとな」
無線をサンヘドリン本部へ。
「本部、情報にあった試験機を保護した。これより敵部隊の殲滅に入る!」
ビンセントが咆る。
「行くぜぇ!レイズ!」
「了解!」
メインスラスターが、莫大な推力を開放し、ロンギマヌスを凄まじい速度で押し出す。
機体はソルジャーの群れの中へ、真っ直ぐ向かって行った。
Captur 2
部隊最奥部のガーズマンに近付くにつれて、更に熾烈を極めていく敵の攻撃。
グラムは、今起きている戦闘に全神経を集中させている。それ以外に、注意を割く余裕も必要も無い。
突然彼は、自分が敵の射線上にいる事を感じ、機体を大きく機動させる。
「1時方向から高エネルギー反応」
巨大なビームが、機体を擦過する。
重力壁を擦過面の一点へ。
巨大なビームパルスから機体を守る。
並の機体ならば、側を通過しただけで装甲が焼け焦げるほどの大出力ビーム。
ガーズマンが放った、ポジトロンビームカノン。
光条が通過し、遥か後方で巨大な火球が咲く。
彼は機体を大きくライドさせ、EPCを連射。
突然、ナイトやソルジャー達が、ガーズマンの前に踊り出て盾になる。
ガーズマンがミサイルを放った。
「ミサイル接近、数20。シグネチャホーミングです」
作品名:VARIANTAS ACT13 背負い 作家名:機動電介