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VARIANTAS ACT10 砂の器

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 グラムは静かに頷いた。
「彼女はきっと、優秀な管理官になりますよ…」
「そうだな…」
 グラムは、ガルスと共に窓の外を眺めた。




************




「もう、ここで大丈夫です」
 アシェルは、空港ターミナルまで見送りに来ていたレイズにそう言うと、小さくため息をついた。
 研修期間は終わった。
 全てが元通りだ。
 今思えば、二ヵ月間が短く感じる。
 しかし彼女は、最後にひとつだけ、彼に言おうと決心していた。
「少し、寂しくなります。お気をつけて。お体を大事に」
「軍曹こそ、ありがとう」
 レイズを見つめるアシェル。
「あの…自分の顔に何か?」
「諦めませんから…私、諦めませんから」
「…え?」
 にこやかに微笑むアシェル。
 そのとき、別れを告げるアナウンスがターミナルに響いた。
「それでは、軍曹…また、いつかどこかで…」
 アシェルはレイズに背を向け、機へ向かう。
 何の事か、彼には伝わらなかったかもしれない。
 でも、彼女にとっては充分だった。
 今はこれで充分。
 後は心の中にしまっておこう…と。
 彼女は帰りの便の席についた。
 この期間中、彼女は様々な事を学び、様々な事を経験した。
 正直、あれほど泣いたり笑ったりした二ヵ月間は、今まで無かった。
 目を閉じれば、今でも浮かんでくる。
 彼の声。
 そして、彼の笑顔。 
 彼女は心の中で呟いた。
「(さよなら…サンヘドリン…さよなら…私の…)」
 彼女は笑顔だった。
 不思議と悲しくはなかった。

『いつか、またどこかで…』

 彼女を乗せた艇は、ポートから離れ、空へ飛び立って行った。
 彼女の心も共に乗せて。


[ACT 10]終