伝説の……
C:clover――誰だよ、LOVEが入ってるなんて言ったのは
全く腹立たしいことに、もはや遠い昔の事とはいえ、命を救われてしまった手前、どうにも弱みを握られているような気分だ。実際、じっと見つめられて頼まれると、もう逃れようがない。
たとえ、「わたしも漫画のように蜂蜜とクローバーのサンドイッチが食べたい」という乙女極まりない話であっても、だ。頬が仄かに染まっていたりなんかしたら、もうお手上げだ。たとえそれが高熱のせいだとわかっていても、上目遣いで言われたら、選択肢など無い。お姫様にかしずく騎士のように、ご要望の品を用意する他ない。
別にアイツがお姫様だなんて言ってないぞ。
とは言うものの、そもそも俺は川が苦手なのだ。当然、川原だなんて近寄りたくもない。知ってるだろ?
すると、俺に出来る四つ葉捜索は必然的に限られてくる。都会でも田舎でもないこの街で、クローバーというのはなかなかお目にかかれない。少なくとも俺は、まるで知らない。
三つ葉でさえ見つからないのに、どうして四つ葉を大量に見つけられると言うんだ?
普段なら文句の十、二十をたたみかけて誤魔化すものの、今日はそうもいかない。果報は寝て待てとも言うが、悪友連中の河川敷捜索隊(正式名称は『クローバーの中にはラブが詰まっているんだぜ同盟』というらしい。ついさっき勝手に結成されていた。なぜそのチームワークは日常で活かされないのだろう)を信じていいものだろうか。
とりあえず、寝とくことにする。不眠不休で三十時間は頑張りすぎた。何をやっているんだ俺は。アイツが喜ぶだけのことで。……。起きたらとりあえず、見舞いがてらに文句を言いにいこう。汗をかいた方がいいから、差し入れは辛いものでいいだろう。別に心配で顔が見たくなってきたなんて微塵も思っちゃいない。ミジンコ程も、思っちゃいない。