夕日
『それはそれは綺麗な紅い太陽』
私は言った。
「あれ取ってきて」
それはそれは綺麗な紅い太陽を指さして言った。
彼は笑う。
取ってこれるはずもない。
私は冗談で言った。
ただの笑い話として。
しかし、見事なまでにすごい裏切り方をされた。
彼は太陽に向かって走り出してしまった。
「あれ、早すぎじゃ…」
苦笑交じりに言う。
まぁ、明日にはまた学校に来てるだろう…。
次の日、
彼は今日学校を休んだ。
まさかね…。
家に帰ってみる。
テレビから変なニュースが流れてくる。
「ぇー、建物が次々となぎ倒されている、
という事件が相次いでいます。
目撃者の証言です。」
はぁ?意味が分からない。
建物が次々と倒れる?
大事件じゃないか…。
「あれは少年のように見えました、
少年が何も障害物がないかのように、
建物を貫いていったんです、
で、その時起こる衝撃で、
そのまま建物が倒れて行くんですよ!
あれは本当に少年だったのか…」
いや、おかしい。
人がそんな事が出来るはずがない。
しかし、その考えも裏腹に、
目撃者の証言により、
頭が痛くなる。
その証言はまるっきり、
彼だと言うことを物語っていた。
「ありえない…」
私は部屋に入り布団に入って寝る事にした。
今日はパソコンをする気分でもない…。
次の日私は学校にやっぱり、
憂鬱なまま行った。
学校内ではやっぱり、
彼のうわさでもちきりのようだ…。
今日も来ていなかった…。
噂には、
「あいつ、サボるためにただ走ってんじゃねぇの?」
「ってか2日もいないとか異常だろ」
たまに思ってたけど…。
とりあえずそれは無視して部活に行く、
先輩にいろいろ聞かれるけど私は、
彼の消息は知らない…。
ただ、今世間で騒がれてるのが彼であると思うことだけ…。
家に帰ると、
テレビではもうすでに全国規模になっていた。
ありえない速度で走る少年…。
何であっても止める事も出来ず、
何であっても追い付くことが出来ない。
まさにそれは災害でしかない…。
次の日私は頭痛のする頭を抱えながらも、
学校に行く。
相変わらず学校は憂鬱だ…。
部活以外楽しい事は少ない…。
しかも、今では部活でいつも隣で、
時にうざいと思ってしまうほどの、
面白い彼はいない。
まぁ、すぐ帰ってくるかな…。
いなくなったらそれはそれで空しいし。
帰ってみると、
もう災害のような少年は空に飛んで行って消えた、
というニュースが流れていた。
「ははは」
まさか空さえも飛んでしまうか…。
彼のことだ、
そのまま太陽にぶつかって、
消滅でもしてしまってるんじゃないかな…。
私は笑った。
それから彼を見る事はもうなかった…。
「いじるだけいじって逝っちゃったなー…」
いつかすごい仕返しをしてやろうと思ってたのに…。
ある意味いい友達だったな。