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夕日

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『真紅に綺麗な太陽』




誕生日がもうすぐ来る彼女は言った。
「あれ取ってきて」
たまたま遊びに出かけた僕たちは今帰りの途中なのだ。
ちなみに、あれと言うのは、真紅に輝く綺麗な太陽を指差している。
いや…取れるわけ無いって…。
そんな当たり前の事を考えながら、僕もとい俺はどうするべきか少し考える。
そろそろこいつの誕生日、仕方が無いから冗談でも取りに行くフリでも見せればいいのかなー…。
「う、うんわかった!」
俺はすぐ帰ってくるつもりで走り出す。
そう、しばらくするまではすぐに帰る予定だったのだ。


障害物は避けてただ走る。
走る走る…。
休むことなく走った。
何故か分からないけど、俺はずっと走っていたくなってしまって、結局かなり長い間走ってる事になるのだが、こんなに体力あったっけか…?
それに、なんか普段以上に速いそんな感じもする。
俺は前にある障害物は得意の横ステップで全部かわしながら走ってる。
何がここまで俺を走らせるんだろう…?
そして、しばらくして限界が来た時、俺は覚醒した。
俺は無限の心臓を手に入れた。
どんなに走っても疲れない体だ。
なんて好都合。
この心臓があれば疲れる事が無い、永遠と走っていられるじゃないか、それに、体力の問題で今まで維持できなかったスピードだって維持できる。。
なんか走りながら、一人テンションあがって走り続ける俺は、ただ太陽のある方角に走る


すごい壁がある、
避ける事が出来ない…それほどでかく凄い壁がある。
飛び越えようとも思ったが、まぁ、上には有刺鉄線あるし、壁は滑るから登る事は出来ないしジャンプで届く高さじゃない。
横を見れば凄くながーく壁が続いててイライラしてきた。
力任せに壁を殴ってみた。
壁はすごい音を立てて凹む。
あれ?こんなに力あったっけ?可笑しいな、なんだろうこの筋力は・・・?でもそれ以上に…。
自分の手は衝撃に耐えられない。
つまり、自分の手はグニャグニャで粉砕骨折と言うのだろうか?まぁ、なんにせよ、手首より先がまともに動いてくれない。
一回攻撃した以上最後までやろう。
体当たりをしてみた。
ただその壁を破壊するべく…。
ただひたすらに、何度も何度も何度も、自分の肩がどうなろうと気にする事無く体当たりを続けた。
体に限界がキタ時、俺は覚醒した。
その際、さっきまでボロボロだった腕とかがいきなり完治した。
どんな障害物も貫いた。
ただ何もないかのように走れた。
つまり、俺は勢いをつけて壁に触れるだけで壁が吹っ飛んでくれる便利な体になったのだ。
面倒なので、建物は片っ端から貫いた…。
太陽は沈んでいく。


走り続けると。
足に限界が来た。
さらなる覚醒が起こった。
俺は何より速く走る。
どんな獣より速く。
チーターなんかより余裕で速く、ハヤブサよりも楽に速く。
どんな機械より速く走れた。
新幹線なんて屁でもない、戦闘機だって目もくれない。
不思議な事に、太陽は昇る。


海にぶち当たった。
自分を信じて海に向かって走った。
足の覚醒は水面上すら走れるだけになっていた。
おぉ、これで俺も忍者の仲間入り!
俺は海すらも足で走り続けた。
太陽はまた昇る。


太陽がまぶしい。
太陽はどんどん上に昇っていった。
「どうしよう…」
太陽は真上にあった。
俺は太陽を見上げて目を細めている。
しばらく考えた末。
俺は上に飛んだ。
何より速く。
ロケットより速く。
むしろ光より速く飛んだ。
俺今更だけど人間超えたなぁ…。


「あ、あつい・・・あつい!」
いずれ俺は太陽にぶつかりジュッ!と言う音を立てて消滅した。

作品名:夕日 作家名:異海 豹