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サーヴィス

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だからこれは神様からのサーヴィス。

 ねぇ知ってる? 私、昔ね、殺されそうになったのよ。
 殴られたり蹴られたり、スタンガンで気絶した事もあったっけ。
 あのね、知ってる?
 本当に怖いとね、やっぱり体って竦むものなのよ。逃げられないの。
 奥歯どころか顎ごとガチガチ言っちゃう感じ。

 目の前でね、日本刀がぶぅんって音を出してね、大事に育ててた観葉植物を真っ二つにしたの。
 でね「お前もこうなるぞ」って言われるの。
 私、あの頃は毎日が恐怖の連続だった。

 だからね、これは神様からのサーヴィス。
 今の私がこうして幸せにしているのは、神様の帳尻合わせなのよ、きっと。
 じゃあ世界で私よりもっと死が身近な――そうね、戦争とか飢餓とかで苦しんでる人達はどうなるの? って思うわよね。
 彼らにはどんなサーヴィスが与えられるの? って。

 私は神様じゃないから、分からない。
 不幸の度合いも、分からない。そもそも他人の幸福や他人の不幸が分からない。
 でも、長い人生の中で一度くらいはサーヴィスタイムっていうのがあってもいいじゃないって思うのよ。

 ね、だからあなたにとっても今はサーヴィスタイム。
 私からのサーヴィス。

 望む事ならなんでも叶えるわ。だから教えて。
 あなたはまだ生きたいの? それとももう死にたいの?
 あなたはボロボロすぎて、残念だけど私にはその判別がつかないわ。

 殺されそうになった私だから。他人に刃を向けられるってどういう事か分かってるから。
 だから教えて。どうしてほしい?


 大丈夫、私なら大丈夫よ。
 どんなになってもあの頃よりはきっと幸せだわ。
 今だって幸せなのよ? だって神様のサーヴィスタイムなんだもん。
 だから平気だから。
 教えて。



 私があなたにサーヴィスするから。
作品名:サーヴィス 作家名:有馬音文