いちごのミミーちゃん
あまりの勢いに、看板が斜めになり、イチゴ大福が皿からこぼれ落ちるのが見え・・・え?
事態を理解することを拒否して、脳が麻痺した。
「そうだ・・・結局、どうなるわけ?」
ざわつく周囲の客、固まる私。
勝負はついていない。ついていない・・・が・・・。
その時、主催者側で話がまとまったらしく、ミミーちゃんぬいぐるみを抱えた司会者が、拡声器片手に話し出した。
そうか、ミミーちゃんは守りきったのか・・・。
イチゴ大福の甘さで痺れた脳に、司会者の言葉はなかなか浸透しない。
急な大雨・・・続行は難しい・・・ほぼ互角・・・想定外・・・
私はただ、雨に打たれるイチゴ大福を見つめていた。
「と、いう訳でして、お三方の賛同が得られれば、じゃんけんで順位を決める、というのはどうでしょう?」
へー。
ぼーっとした私に、周囲の視線が集中する。
「よろしいでしょうか?」
「え・・・あ・・・?えっと・・・はい・・・」
どうやら、後の二人はすでに賛同していたらしく、さっさとじゃんけんの輪が作られる。
脳が痺れたままじゃんけんをし、どうやら1勝1敗だった私は、「イチゴのミミーちゃん特大ぬいぐるみ」は逃したものの、二等の「イチゴのミミーちゃん文具セット」なるものをもらった。
ノートやら下敷きやら鉛筆やら何やらが入った豪華セットは、三等の「イチゴのミミーちゃんキーホルダー&ストラップ」よりは、娘の役に立つだろう。
その後のことは、何が何だかよく分からなかった。
一生どころか、来世の分までイチゴ大福を食べた私に理解できたのは、娘が「文具セット」を非常に気に入り、「お父さんありがとー!!」と言ってくれたことまでだった。
気絶しなかっただけでも、表彰してもらいたいものだ。
次の日、吐き気と胸焼けに苦しめられる私に、妻が、娘が宿題の絵を書き上げたことを知らせた。
私は、急いで娘の部屋に行く。
娘を起こさないよう、そっと部屋の中に入ると、机の上に置かれた画用紙を覗き込んだ。
そこには、「おとうさん」と言う文字と、イチゴが乗った大福が書かれていた。
終わり
作品名:いちごのミミーちゃん 作家名:シャオ