影響された世界にて
ルリジとウォーは、なんとか出入口にたどりつき、特務艦から外へ飛び出した。外は夜のため真っ暗で、水色の月と緑色の星々が、かすかに地面を照らしている。だが、森の中は一寸先も見えないほどの闇で満ちているようだった。
「俺たちが来たのはどっちの方向からだっけ?」
ウォーが頭をひねってルリジに聞いた……。
「あっちからだよ。ほら、よく見ると足跡が」
「ああ、ほんとだ」
ルリジが指さした所から森の中の獣道へ3人分の足跡がへ続いていた。しかし、そこからの足跡は、暗闇で見えない。
『自爆まで残り10分です!』
ルリジとウォーが森に向かおうとしたとき、特務艦の中からアナウンスがした。もちろん、ルリジたちにその言葉の意味はわからかった。何かを強く訴えていることぐらいしかわからない。
「ちょっと見てくるから先に行っていてくれよ」
「ああ、わかった」
ルリジは特務艦へ、ウォーは森へ向かった。
ルリジはまた特務艦に乗りこんだ。出入口付近の壁に、小型モニターがあった。この特務艦が自爆するまでの制限時間が表示されており、その数字は刻々と減少していく。その数字の下には、速やかに脱出するようにという文字も表示されていた。
その小型モニターは、艦内に設置された制御コンピューターのうちの1台であった。
「?」
ルリジは首をかしげていた。やはり、ルリジには理解できなかったようだ。
少し考えこんだ後、ルリジは不器用な手つきで、小型モニターのすぐ下のキーボードのボタンを、適当に押し始めた。
すると偶然にも、自爆プログラムを解除させてしまった……。制限時間と警告文字は消え、モニター画面は真っ暗になる。
彼は、また首をかしげた。あいかわらず、何も理解できていないようだ。
ルリジは、このことをこれ以上考えるのをやめた。今は、ピスのことを考えなければならないのだ。
彼は、艦から外へ飛び出した。
ウォーは周りに注意しながら森の獣道を進んでいた。空に浮かんでいる四角い水色の月が、森の中をうっすらと照らしている。だが、ウォーが注意しているのはつまづいて転んだりしないようにするためではなく、森に潜む獣に襲いかかられないようにするためだった。
特務艦で調達した自動小銃をこん棒のようにして構え、いつでも振り下ろせるようにしている。
5分ほど森の獣道を進んだころ、前方に2つの影があった。1つの影は小さく、もう1つの影は大きい。ウォーは、目をこらして、その2つの影の主を見る。