小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

俺には、家庭教師がいる

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 


日曜日までの時間はすごく長かったけど、日曜日になってみると時間はあっという間だった。
初めて朝シャンなんてものをしたし、服はいま一番お気に入りのアーガイル柄のパーカー。
準備をととのえて駅に向かう。早過ぎないように、遅すぎないように、駅に着くと約束の時間の10分前。
周りをちょっと見回すけど、待ち人はまだきてないみたいだった。

「ヒロ」
「うわっ」
いきなり後ろから呼ばれて、飛び上がるかと思った。
こんな現われ方がまた和生さんらしい。
「待たせた?」
「いや、全然っ」
・・・なんかこういうの、恋人同士の会話っぽいな、なんて思うのは、俺だけなのかな・・?
「よかった、じゃあいこうか」
歩き出す和生さんの隣をちょっと早歩きでついていく。
歩くの遅いのがばれたら、足の長さの違いだよとか言われて、絶対からかわれるに決まってる!!

電車で2駅、そこから歩いて10分かからないくらいのところに目的のアパートがあった。
階段を上がって、廊下を歩いているときもなんだかドキドキしっぱなし。
「ヒロ?なんか緊張してる?」
からかわれるような口調でいわれて、もはや条件反射的に
「んなわけねーだろ!!」
と返す。
こういう言い方をするといつもクスクスと笑われるのが悔しい。

でも逆に、恥ずかしいけどウソがばれるってことはそれだけ和生さんが俺のことわかってくれてるってことだからうれしくもある。

「さ、どーぞ」
ドアをあけてもらって、先に中に入る。
まず、廊下があって、ここに風呂とかトイレの扉がある。その奥に行くと、キッチン。
キッチンから奥につながるドアをあけると、和生サンの部屋がある。
「なんの面白みもなくて、申し訳ないけどね」
「いやっ、全然そんなことないっ」
ドアからみて、左側にベッドがあって、その奥に机。右側は全部押入れで、前はベランダ。床の空いたスペースには座卓が置いてある。
「ま、適当に座って」
といわれたから、ベッド側の座卓の前へ座った。
「お茶くらいしかないけど、いい?」
本当ならお構いなく、とか言わなきゃいけなかったんだろうけど、興奮していて首を縦に振ることしかできない。
「ちょっと待ってて」
家主がキッチンへ行ったのを見て、落ち着いて周りをみわたす。
全体的に緑系統の色でまとめられた部屋。物が少なくてさっぱりとしているけれど、本棚には難しそうな名前の本が所狭しと並んでいた。
「お待たせ」
ポットと、2つのカップが机に置かれる。
お茶を入れてもらってお菓子も出してきてくれて、なんかもてなされてる感じ。

「遅くなったけど、高校入学おめでとう」
「あ、ありがと…」
まじめに言われると、なんか照れる。
「これ、気に入ってもらえるかどうかわからないけど」
目の前に出されたのは、細長い形の箱。
「どうぞ」
渡されておずおずとそれを受け取った。
「開けてもいいの?」
「もちろん」
包装用紙をとって、箱を開けてみて入ってたのは、腕時計。
「これ、俺に?」
「ヒロのために買ってきたんだよ」
なんか素直にそういわれると、変な感じ。
でも、和生さんから何かもらえるなんてすごくうれしい。
「和生さん、ありがとうっ」
本当にうれしいってことを素直に表現できないのがもどかしいけど、本当にすごくうれしい。
「といっても、今のヒロにはそれは大人っぽすぎるけどね。まだまだ子供だから」

頭をぽんぽんってされながら、子供っていわれた。

今まで嬉しかった気持ちがその一言で一気に萎んだ。
・・・悔しいっていうか、ちょっと悲しい。
子供って言われるってことは、やっぱ付き合うとか、そういう対象じゃないのかなって思い知らされる。
和生さんとつり合いたいなんて、贅沢なことはいわないけど、追いかけられる位置にいたいのに・・・。

「でも、高3くらいになれば、ヒロもだいぶ大人になるだろうし、それを使う機会も増えるよ。大学入試模試とかね」

高3になれるのは、あと2年後。今の俺には、遠すぎる。

でも、こんなこと考えてるなんてことを悟られちゃいけないから、いつも通りに振舞わなきゃいけない。

「模試って、受験終わった直後にもう受験の話?」
「まあね、でもあっという間だろうし、高校なんて入った瞬間進路の話されるものだから」
「うわー・・行く気萎えるー・・・。でもいい。大学受験だって和生さんがいれば大丈夫だし」

『現実はそう甘くない』とか『努力しだい』とかいう突っ込みが入ると思ったのに、何も突っ込まれなかった。
和生サンの顔がちょっと苦笑いを浮かべただけで。
嫌な予感が胸をよぎる。

「和生さん、大学受験も見てくれるよね?」

苦笑いは、崩れない。

「・・・ヒロ、いい機会だから今のうちに聞いておいてほしい。ウソを言っても仕方ないからいうけど、見てあげられないと思う」
「なんでっ!?」
そんなこと言われても全然信じられない。信じたくない。
「ヒロ、落ち着いて」
落ち着いてなんて、いられない。
「和生さん、やめちゃうの?」
否定の返事が欲しくて聞いたけど、その望みはかなわなかった。
「俺が今大学2年なのはヒロも知ってると思うけど、ヒロが高3になるころ俺は大学4年生なんだ。卒業論文も書かなきゃいけないし、大学院へ進学の準備をしてると思う。受験の時期が重なるし、大学受験は高校受験とはくらべものにならないほど大変だから。中途半端にヒロの家庭教師を続けて、後悔したくないし、ヒロにも後悔してほしくないんだ」
「俺は・・・和生さんに教えてもらえるなら後悔なんてしない・・・」
「そう思ってもらえることは嬉しいよ。俺がやめることになって、もしヒロが希望するなら信用できる奴を紹介するから」
「・・・そうじゃなくてっ!俺は、和生さんがいい」
「ヒロ」
興奮する俺をたしなめようと頭を触ろうとする和生さんの手を払う。
「俺は子供じゃないっ!」
頭を触られるときはいつも子ども扱いされるときだから。
それがいつも、すごく悔しくて、悲しい。
「ごめん、もう高校生か」
なんでここでそうやってマジに謝るんだよっ。
いつもみたいに軽口で返してくれれば、何もなかったみたいにできるのに。
本当にもう、泣きそうだ。そんな情けないことは絶対にしたくないけど。
「でも、ヒロは子供だって自分に言い聞かせてないと、危ないんだよ」
「どういう意味だよ、わけわからない」
「こういう意味」
体に衝撃を感じて、背中が床についた。
顔を上げると、真上に和生さんの顔。
いつもかけている眼鏡が外れて、床に落ちる。
急な展開にまったく頭がついていけてない。
「和生さん・・・?」
「俺のこと、突き飛ばして殴ればいい。そうしたらこんなこと二度としないから」
眼鏡がないからか、いつになく真剣にみえる。
「・・・いいよ。和生さんのことずっと、こういう意味で好きだったから。やめなくていい」
「本当に?後悔してもしらないよ?」
目の前の顔にいつもの調子が少し戻る。
「和生さんとなら絶対に後悔しない」
言い切った瞬間にキスが降って来た。
今まで一回もしたことない、大人のキス。
キスに全神経を奪われてるうちにいつの間にか服の中に手が入ってきてた。