大人のための異文童話集2
ある日のこと。
グラスバニーが光も稀にしか届かない、それはそれは深い森に迷って泣いていると、不思議なトカゲと出会いました。
そのトカゲは全身に光を浴びると、グラスバニーと同じようにキラキラと輝くのです。
ガラスの体のことで、いつも学校で虐められていたグラスバニーは、すぐにそのニジイロトカゲと仲良くなりました。
ニジイロトカゲも、この深い森の中で毎日ひとりで暮らしていたため、お友だちが出来て大喜び。
楽しくて仕方がないふたりは、時間を忘れて遊んだのでした。
いつの間にか日の光りも、すっかりとその姿を隠してしまっています。
グラスバニーは、心配しているお母さんのところへと、やはり帰らなくてはなりません。
ふたりの思いは同じ。
このままふたり…いつまでも楽しい時間が続けばいいのにと。
そんなふたりは、動物たちも恐れて近付かない泥沼の、傍にある小屋の中で約束をしました。
グラスバニーはキラキラ輝くガラスのしっぽを、ニジイロトカゲは虹色に輝くシッポを。
お互いのシッポをもぎ取って、その『約束の品』を再会の証しとして交換したのでした。
毎日、ガラスのしっぽを眺めて暮らすニジイロトカゲ。
ひとりでは、決してこの深い森からは出ることの許されないニジイロトカゲ。
ニジイロトカゲの体は、森の隙間に見える遠い向こうの空が、ひときわ輝くとその光で虹色に輝きます。
あれから幾年…。
今でもニジイロトカゲは、遠い向こうの空が輝くと、約束を思い出して欲しくて、いつも大きな虹を架けているのでした。
作品名:大人のための異文童話集2 作家名:天野久遠