FLASH
鷹緒は言葉を選ぶように、途切れ途切れにゆっくりと、そう口にしていた。そんな鷹緒を見つめながら、沙織は震える唇を、なんとか言葉にする。
「い、今……なんて?」
やっとのことでそう言った沙織の涙を、鷹緒の手が拭う。ハッキリと見えた鷹緒の顔は、静かな微笑みを向けている。そして何かを吹っ切ったように、鷹緒は沙織をもう一度抱きしめた。
「俺も好きだよ……」
抱きしめられた沙織は一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「う、嘘……」
信じられないといった様子で、沙織は鷹緒の腕の中にいる。鷹緒を見上げる表情は不安気だ。
形勢逆転といった形で、鷹緒は苦笑した。そしてもう一度、沙織にキスをする。
「嘘じゃないよ……」
「……じゃあ、もう一回言って……」
「アホ。そんなポンポン言えるか……」
呆れたように、少し顔を赤らめて鷹緒が言った。そんな鷹緒の腕の中で、沙織が飛び跳ねる。
「嫌だ、もう一回だけ! お願い……」
あまりに切実な目で見るので、鷹緒は目を逸らして、小さく溜息を漏らした。そんな鷹緒に少しだけ傷つきながらも、沙織は見つめることをやめない。
やがて意を決したように、鷹緒は沙織を抱きしめ、沙織の耳元で囁いた。
「愛してるよ……」
とろけるような幸福感が、沙織を満たしてゆく。くすぐったいが心地よい。
やがて合う目線に、二人は縺れ合うようにして床に倒れ込んだ。もう、何も妨げるものはない。本能の赴くまま、二人は愛を確かめ合うのだった――。