FLASH
沙織はそこから去っていった。みんな優しかったが、淡々とした雰囲気が馴染みづらかった。
鷹緒は広樹とともに、事務所へと戻っていく。
「鷹緒。沙織ちゃんのバイト代だけど、手渡しでいいのかな?」
信号待ちをしながら、広樹が鷹緒に尋ねた。
「ああ……聞いてないけど、いいんじゃない?」
「おまえなあ……」
「あいつ、どう? 使えた?」
鷹緒の言葉に、広樹が呆れたように返す。
「おまえの下で働かせてんだろ?」
「俺の下の下だもん。下っ端の働きぶりなんて、見てねえよ」
その時、信号が青になったので、二人は歩きながら話し続ける。
「スタッフの間では、評判よかったよ。まだ何やればいいのかわからないだろうけど、気働き出来るし、使えるよ。それよりあの子、可愛いじゃない。目はパッチリで髪もふわふわ、しかも現役女子高生。モデルでいけるんじゃない?」
広樹の言葉に、鷹緒は静かに笑い、煙草に火をつけた。
「あーんな丸っこいのが、モデルなんて出来るわけねえだろ」
「丸っこいったって、太ってるわけじゃないだろ。顔は可愛いし、今は読者モデルの時代なんだぜ? 絶対、人気出ると思うんだけどな……」
「社長の勘か? 俺はややこしいのが嫌なんだ。あいつの母親には、変なことには使うなって念を押されてるし」
それを聞いて、広樹は吹き出すように笑う。
「変なことって……AVとでも勘違いされてんのかな?」
「ハハ。とにかく、俺からは口説けないぞ」
「わかったよ。それは僕がやる」
広樹がそう言う。二人は事務所へと戻っていった。