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Pure Love ~君しか見えない~

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『だけど……僕に障害があることを、祥子のご両親は理解してくれるだろうか……』
 やがて、押し黙っていた和人がそう言った。祥子の表情は、みるみる悲しそうになる。
「だ、大丈夫よ。和人に障害があることは母親しか知らないけど、心配はしても反対はしなかった……父は厳しい人だけど、和人なら大丈夫。こんなに誠実な人はほかにいないもの」
 その言葉を聞いて、和人は照れながらも少し困ったように俯いた。
「ごめん。やっぱりこんな話……急だったよね」
 和人の真意を知るかのように、祥子が申し訳なさそうに言った。和人は祥子を見つめる。
 付き合った当初は、どの程度の付き合いになるかわからなかった。ただ姉のように慕う和人に、弟のように面倒を見てくれてきた祥子。いつしか互いに意識し合い、自分の夢を一緒に見させてくれた祥子。和人にとって祥子は、愛しい人に違いはない。
 だが、何度目を閉じても、浮かんでくるのは幸の姿だった。拭い去れない幸の顔が今も尚、和人を支配している。
『そんなことないよ……』
 心と裏腹に、和人の返事はこうだった。祥子と幸は比べようがないのだ。事実、自分が幸と一緒になれるはずがない。和人はそう考えていた。
「和人が……自分の障害を楯にするなんて思わなかった……」
 やがて口にした祥子の言葉に、和人は衝撃を受けた。
 以前、同じように幸に怒られたことがあった。障害を負っている自分が卑下してはいけないのだと。だから差別はなくならないのだと。
 そんな気はなかったものの、和人は自らを差別していたことに気づき、今回は無意識ながらも、祥子に「NO」と言ってしまったのだと思い知らされていた。
『違う、そういう意味じゃない。無意識に……』
「もう今日は帰ろう。この話は、また今度ね……」
 すっかり意気消沈した様子の祥子に、和人はもう何も言えなくなっていた。
「しばらく時間を置こう……」
 店を出るなり祥子はそう言うと、その場を去っていった。和人は固まったように、しばらくその場に立ちつくしていた。祥子に酷いことを言ったのだと反省しながらも、未だ消えない幸への想いに苛立ちと不安を覚える。
 その時、和人の肩が叩かれた。突然、現実の世界へ引き戻されたように、和人は驚いて振り返ると、そこには見覚えのある女性の姿があった。幸と同じ音楽学校へ通い、以前和人と少しだけ付き合っていたことのある女性、山之内真由美である。優柔不断な和人と真逆で、押しが強くサバサバした女性だ。別れてからは一度も会っていない。
「やっぱり、カズ。久しぶり!」
 以前と変わらぬ態度で、真由美が言った。和人も笑顔に戻って会釈する。相変わらずの和人の作り笑顔に、真由美は苦笑した。
「そっちも相変わらずみたいね。こんなところでどうしたの?」
 変わらず手話で話しかけてくれる真由美に、和人も少し苦笑して答える。
『ちょっと……食事です』
「そう。もし暇なら、ちょっとお茶でもしない?」
 和人は真由美に申し出に乗ると、近くの喫茶店へと入っていった。