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VARIANTAS ACT6 閉鎖

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 体勢を崩すネクロフィリア。
 ネクロフィリアの腹にそっと宛がわれた左手から、重力波が放出されたのだ。
「まだまだぁ!」
 ネクロフィリアがブレードを振る。
 ディカイオスは右腕でブレードをガードし、左正拳を打ち込む。
 ネクロフィリアは、右腕で拳をガード。
 ディカイオスが“急所”へ右足を蹴り上げる。
 ネクロフィリアは左腕でガード。しかしその瞬間、ディカイオスの左ハイキックがネクロフィリアの右肩を直撃した。
 弾き飛ばされるネクロフィリア。
 その瞬間ディカイオスは、亜空間コンテナから、フレスベルグを抜き、ネクロフィリアの頭を打ち抜いた。
「アーチャー!今だ!」
 アーチャーから発射される荷重力弾。
 吹き飛ばされたネクロフィリアが、ゲートのもっとも近くに接近したその瞬間、砲弾はゲートのパワーポイントへ寸分違わず命中。同時に、ディカイオスの右正拳突きがヒット。
 三つの閃光はやがて一つになり、ネクロフィリアはゲートの中心へ吸い込まれてく。
 波打つ境界面。
 徐々にゲートは暗く、そして小さくなっていき、小さな点になった瞬間、まばゆい閃光とともに消滅。
 ゲートのあった場所の空だけ、雲がきれいに消えていた。



***************




 水平に、デッキに進入。
 逆噴射で減速、そのまま甲板に着地。
 脚の裏から火花が散り、崩れるように膝を突くHMA。
 機体のあちこちから、煙が上がっている。
「収容急げ!」
「担架もってこい!」
 クレーンのブームがスイングし、HMAをワイヤーで吊り上げ瞬間、機体の膝から下が、『ガシャ!』と音を立てて、崩れた。
「一番デッキ着艦完了、二番デッキ着艦可能」
 残った空母に、次々と着艦していくHMA。
 どの機体もボロボロで、腕や脚の無い者、パイロットが意識を失っているものもいた。
「受け入れの出来るすべての艦は、ダメージの激しい機体から優先して収容! 戦艦、駆逐艦、巡洋艦! 使える艦はすべて使え! すべての衛生部隊は生存者、及び負傷者の救出、収容に向かえ! 大至急だ!」
「了解!」
 海面を漂う兵士達を救出していく救出艇。
 意識の無い者。
 既に息絶えた者。
 着艦官制は、地獄のような忙しさとなった。
「シェーファー01、着艦要請!」
 レイズのラッシュハードロングが、空母にアプローチ。
「シェーファー01、ロアデッキへ」
「こちらシェーファー01、了解。負傷者がいる! 救急班を!」
「了解」
レイズは空母のデッキに着艦すると、すぐにハッチを開け、サラのセーフティーバーを上げた。
「ごめんよ…サラ…君に負担を掛け過ぎたね…」
 大きく掛かった負荷のせいで、意識を失っているサラを抱きかかえるレイズ。
 彼はそのままHMAから降り、彼女を担架に寝かせた。
「お願いします。負荷を掛けすぎました」
 医務室に連れて行く救急班。
 それを見送ったレイズは、ヘルメットを脱ぎ、髪をかき上げた。
 振り返るレイズ。
 赤いレイズの機体から、熱膨張した金属が収縮する特有の音が聞こえていた。




************




 収容を終え、白波を立てながら、海面を突き進んでいく艦隊。
 時は既に夕暮れ時で、薄汚れた空の切れ目から、赤い夕日の光が漏れていた。
「やっぱり、ここにいたんですね」
 空母の大きな窓の前に立ち、無表情で外を眺めるグラムに、エステルが話しかけた。
 無言のグラム。
「大佐は、戦闘の後、時々空を見ていますね…」
 グラムの横に立ち、一緒に空を眺めるエステル。
「…時々無性に、空が見たくなる。なぜかは分からない…」
「空…」
「昔は青かった空も、今は真っ黒だ。だが、夜が来れば、何も分からない…すべてが黒だ…」
 太陽はやがて沈み、彼の言う通り、すべてが、『黒』になった。
 真っ暗な空…
 真っ暗な空気…
 すべてが一つになり、夜を形作った。
「…ねぇ、グラム…どうしてあの時、リベカに止めを刺さなかったの?」
「……」
「あのままなら、簡単に止めを刺せたでしょう?」
 無言のグラム。
 エステルは彼の横顔を見つめた。
「分からない…ただ、何かが…」
 グラムは言葉を濁した。
「…そう…」
エステルは、もうそれ以上聞かなかった。




************




「もう、心配ありませんよ、軍曹。一時的なシャットアウトです」
 サラの容態を説明する軍医の言葉を聞いたレイズは、安堵の表情をした。
「今は、このまま静かに寝かしてやれば、すぐによくなりますよ」
「よかった…」
 レイズは、ベッドに眠るサラの髪を撫でて、優しく微笑む。
「大丈夫かい?サラ…」
 ゆっくり目を開ける彼女。
「…レイズ軍曹…」
「よくがんばってくれたね…ありがとう」
「私…また、意識を…」
「いいんだよ…サラ…」
「え…?」
「君が無事なら、それでいい…」
「レイズ…」
 微笑む彼。
「やっと、名前で呼んでくれたね」
「お気に触りましたか…?」
「いや…いいんだよ。それでいいんだ」
 彼はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。
「じゃあ、後はよろしくお願いします」
 敬礼して、医務室を出るレイズ。
 部屋を出た途端に、誰かが彼に話しかけた。
「どうだった、レイズ。機体の調子は」
「大佐…」
「どうだ、彼女の様子は」
「ええ、大丈夫です。サラが、出力を出してくれなかったら、自分は今頃…」
「まだまだ…いや、及第点…といったところか…」
 肩をすぼめるレイズ。
 レイズに背を向け、歩き始めるグラム。
「サラ…か…良い名前だな…レイズ…」
 彼はそういうと、背を向けたままゆっくり去っていく。
 自然と笑顔になるレイズ。
 彼は、靴のつま先をそろえ、姿勢を正して敬礼した。



[ACT 6]終