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Minimum Bout Act.04

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 ルーズが出て行ってしばらく、騒々しい足音と同時にドアが勢いよく開き、セイラが飛び込んで来た。

「カッツーーーー!!!」
「どわっ!? てめえ、飛びつくんじゃねえっ!」
「大丈夫なの? 後遺症とか残らないの?」

 ペタペタとカッツの顔を触り、心配そうに尋ねる。

「大丈夫だっつーの! いいから離れろっ、後ろが引いてるだろうがっ!?」
「あ」

 そこでセイラは我に返り身だしなみを整えると、セイラの後から階段を降りてきた男二人を紹介する。

「カッツ、エンド政府環境保護局のクライリー副局長。そしてこちらがエンド国家公安委員会のホズミ委員長補佐官。クライリー副局長
、ホズミ委員長補佐官、彼が私の幼なじみで、MBのカッツです」

 これはまたなかなかの大物のお出ましに、カッツは心の中でため息を吐く。

「今回の地球での件はご迷惑をおかけしました。我々エンド政府としてもplainの動向は気になっていたのですが、はっきりと把握できていなかったんです。バーミリアン君もあなた方も危険な目に合わせてしまって……」

 クライリーという男はやけに骨張った体の、緑を基調とした政府の制服があまり似合わない科学者タイプの男だった。話し方も役職の割に偉そうでなく、話す時も相手と目を合わせるのが苦手な感じでどことなく落ち着きがない。

「俺達は怪我で済んだから良かったけど、あんたんとこの調査団員は死んだんだろ? 何か手は打ってるのか?」

 カッツが尋ねると、今度はクライリーとは正反対の、あごと腹部にやや贅肉が乗った偉そうなホズミという男が答えた。

「その件に関してだが……出来るだけ詳しく君達が地球で襲われた時の情報を聞かせてくれ。連中は何の目的で地球に来ていたのか、分かるかね?」
「あー。まあ、取りあえず座ってくれ。おいセイラ、お前ちょっと茶入れて来い」

 二人をソファに座るよう促し、セイラにそう言うと自分も腰を下ろした。
 セイラは笑顔で直ぐさまキッチンへと入って行き、手早く茶の準備を始める。

「俺は怪我をしていたから、その間仲間が調べてくれた」

 そして懐からCDを取り出し、二人の前へ差し出す。

「今回に関してだが、どうやら組織の連中、地球の鉱物を持って帰ったみたいだぜ」
「鉱物?」

 クライリーがカッツを見る。それに頷くと、カッツはテーブルの端に置いてあったノート型端末にCDを入れる。
 これは、カッツが意識を失っている間にシンとルーズが出来る範囲で調査した結果が書き込まれているCDだ。

「宇宙では当たり前のように使われている鉱物はたくさんあるが、地球にしか存在しない鉱物もたくさんある。そしてそれには希少価値があり、さらには付加価値までついている」
「……資金源、という事か」

 ホズミが肥えたあごを撫でると、画面に映し出された映像を次々呼び出しながらカッツは続けた。

「ダイヤ、サファイヤ、アレキサンドライトなんかの宝石は、宇宙でかなり高額取引されてるからな。それこそここの上に住んでるような連中は、いくら払ってでも、人を殺してでも欲しがる奴らばっかりだ」

 天井を指差すカッツに、ホズミが首を傾げる。

「それで? 具体的には何を探していたか分かっているのか?」
「まだ調査中だ。地球にいた連中はかなりの訓練を受けた戦闘兵だった。組織がそんな武装した連中を地球に送り込んだのは、鉱物採掘以外にも何か目的があったんじゃないか。と、俺は睨んでる」
「お待たせしました」

 そこで丁度セイラが茶を入れて戻ってきた。
 ちゃっかり自分の隣りに座るセイラの頭を鷲掴みにし、カッツは目の前に座る二人の男を見てにいっと笑った。

「こいつも危険な目に遭わせちまったからな。頼む、もう一度地球に行かせてくれ。今度は本格的に調べたい。出来れば調査費用とか全部そっちもちで。んで、何か分かったらすぐに報告するから、あんたらはあんたらで何か分かったら教えて欲しい」
「それで我々に何かメリットがあるのか?」
「ーーーあんたら政府はplainを消したがっている。違うか?」

 カッツのその言葉は図星だったらしく、クライリーとホズミは黙した。

「だが、あんたらと組織は蜜月関係でもある……そこで、俺達みたいな民間人が勝手に動いて、組織を徹底的にやり込める証拠を集めて表沙汰になれば、政府としても名目上組織を罰しない訳にはいかない。だからあんたらはそれを俺達にやらせる為にわざわざこんな所まで来た。違うか?」

 二人は視線を交わし小さく頷くと、マイクロチップをテーブルの上に置いた。

「君達MBに対し、地球の調査依頼を正式に政府側から申請しよう。必要な物があればそこのバーミリアン君に言って何でも揃えるといい……」
「よろしくお願いします。あの、地球で鉱物を見つけたら環境保護局へ届けて頂けますか?」
「ああ、任せとけって」

 マイクロチップを受け取り、立ち上がった二人と同時にカッツも立ち上がった。



 組織を相手に本格的に動くのは今回が初めてだ。
 カッツは組織のやり口は好かなかったが、自分が動いた所でどうこうなる相手ではないと思っていたし、出来るなら深く関わりたくないと思っていた。
 それだけに、今回地球へ行って組織に関する情報集めをする事を決心した自分自身に、多少の戸惑いはある。
 しかし、シンやルーズはもう動き出している。
 それぞれがどういった意図で行動しているのかは分からなかったが、行動するべき時なのかもしれないと思った。

 再び、地球へ行くのだ。



 

作品名:Minimum Bout Act.04 作家名:迫タイラ