Minimum Bout Act.04
「全く話しにならねぇ!!」
ドガッ!!!
建物から出て来たカッツは、立派な植え込みの木を思い切り蹴った。蹴られた木は大きく揺れ、ザワザワと葉を落とす。
「駄目だったのか」
そんな怒り心頭のカッツに、シンが携帯端末から顔を上げてほくそ笑む。
「セイラは今、仕事で出かけているらしい。それにやっぱりっつーか、リドヒムの事に関しては上が決定した事だから自分には分からないだと!」
「だろうな」
「くっそー! 上って誰だ!? おい、シン! 今からそいつに会いに行くぞ!」
「む、無茶を言うな。上とはエンド国家大統領の事だぞ? いきなり行っても捕まるのがオチだ」
「分かってるよ、そんな事ぁ! ーーあ~もう、リドヒムの連中にどんな顔して会えばいいんだよ、このやろお!」
再び木を蹴り、カッツはシンの手元を覗き込んだ。
「んで? ルーズの居所は掴めそうなのか?」
「何だ、もう怒りは治まったのか?」
「うるせぇ、そう言うお前こそ、何でそんなに冷静なんだよ。ムカつくなあ」
「ーーーオレ達がここでどうこう言っても政府がいい条件を何も無しで提案してくるとは思えない。それよりも、アインに来たリドヒムの人間を、軍人にする前に他の星で仕事が出来るように助けたらいいんじゃないかと、カッツを待っている間に考えた」
「それは俺も考えた。だがな、全て上手く行くとは限らない……やっぱり地球に行って組織の情報を握って来る以外道はなさそうだな」
「そうだなーーーあ」
真面目に言葉を吐くカッツを見て、携帯端末に視線を落とすと、ベニーランドのはずれにある港近くの店でルーズが買い物をした事が分かった。
やっと行方を見つける事が出来た。
「取りあえずルーズのやつを捕まえに行くぞ。俺に黙って勝手な行動ばっかりしやがって、一発きつく灸を据えてやる」
「逆に据え返されなきゃいいがな」
「MBのリーダーは、お、れ、だ!」
さっと身を翻し、カッツは歩き出した。その後ろ姿を追って歩き出そうとしたシンが、先ほどルーズが買い物をしていた店の目の前にあるバス停を降りた人物に驚く。
「何だ? どういう事だ?」
「おい、シン! さっさと来い! 置いて行くぞ!」
シンは口を開きかけ、すぐに噤む。カッツに伝えるべきか、考えた。
まだ言わない方がいい。そんな気がした。
駐車場に止めたカッツの小型飛行機に乗り込むと、カッツの携帯が鳴った。
「おう、セイラか? お前今どこにいやがるんだ! ずっと連絡付かねえから困ってたんだぞ! ったく、必要な時にいないなんて、お前も使えねえな! ーーーあ? おま、何言って……」
「どうした、カッツ」
急に黙り込んだカッツを隣りから伺うと、ゆっくりとこちらに顔を向けたカッツが携帯を投げて寄越した。
「ぶっ飛ばすぞ、シートベルトしっかり締めとけ」
「お、おいっ!」
言い終わるが早いか、カッツは乱暴に飛行機を空中に浮かばせ、思い切りアクセるを踏み込んだ。
続く…
作品名:Minimum Bout Act.04 作家名:迫タイラ