小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

VOICE

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

時が流れて、僕は無事、大学を卒業する。
バイト先から、正式に社員にならないかという申し出があったけれど、丁寧に辞退した。

あれから、一度も彼女のアクセスはない。

「ハルト」も、僕がバイトを辞めると同時に、「海外に音楽の勉強をしに行く」という名目で、サービスからいなくなった。


小さな会社に何とか就職口を見つけ、春から社会人となる。
慣れないスーツとネクタイ、満員の通勤電車が、僕の生活の大半を占め、「ハルト」の記憶を押し流していった。


そして、社会人として、二度目の春を迎えたある日。


通勤途中、新しい店が出来ていることに気がつく。
こじんまりとした店先に、色とりどりの花が咲き乱れていた。

「何だ?花屋?」

物珍しさもあって、何人かの女性が店内を覗いている。
特に用もないので、足早に通り過ぎようとしたら、

「いらっしゃいませ!」

明るい声が響いた。
マイクを通さないその声は、遠い記憶を呼び覚ます。
驚いて足を止めると、店の中から一人の女性が現れた。
店内を覗いていた女性達に、てきぱきと対応している。
長い髪を一つにまとめ、薄化粧の顔は、明るい笑顔を浮かべていた。
その姿を、ぼんやりと眺めていたら、

「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」

気がついたら、先ほどまでの女性達の姿はなく、目の前に彼女が立っている。

「あ、あの・・・」
「どなたかに贈り物ですか?」

そう言って微笑む顔は、初めて見たけれど。


その声は、間違えようがない。


「あの・・・花束を、贈りたいんです」
「はい、ありがとうございます。どのような用途でしょう?お祝いですか?」
「はい、えっと・・・お祝い、です」

僕は、彼女の笑顔をまっすぐに見つめ、

「僕の大切な人に。夢を叶えたお祝いです」


終わり
作品名:VOICE 作家名:シャオ