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ごはんの時間だよ
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novelistID. 9981
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カップの中でここあちゃんは

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二十三時を過ぎ、子どもたちが寝静まった頃――。あつあつのココアが注がれたカップの中で、ここあちゃんは目を覚ましました。寝起きのここあちゃんは夢見心地で、ふわりふわりと浮いたり沈んだりを繰り返しています。

「おじさん、今夜はなにをするんだろう?」

 ここあちゃんは目を閉じたまま考えました。先週の試験の採点? 次の授業の予習?…… おじさんはお仕事がいっぱいで、夜遅くまで起きていることがよくあります。
 ここあちゃんは、ココアの中で耳をすませました。ここあちゃんのやわらかい髪が揺れます。

「おじさん、今夜はラジオを聴かないのね」

 おじさんは毎晩、娘さんが眠ったあと、あつあつのココアをつくります。そして部屋にこもり、ここあちゃんと二人っきりになってお仕事をするのです。
 ここあちゃんは、おじさんのカップにとりついている小さな女の子です。頭に赤いリボンを結わえ、ふわふわのスカートに白いエプロンをかけています。

 「おじさんの顔を見てみたいな」

 ここあちゃんは、おじさんと、おじさんのつくるココアが大好きです。缶入りのココアパウダーにたっぷりのお砂糖、低脂肪じゃないミルクと、それから隠し味のクリープ一杯。おじさんのココアは最高です。

「今夜のココアはいつもよりちょっと熱いから、いつもよりちょっと長く、いっしょにいられるのね」

 たぷたぷのココアの中で、ここあちゃんはくるりと回りました。

 時間がたち、ココアが人肌よりも冷めはじめると、ここあちゃんはいつの間にか眠ってしまいます。眠ったあと自分がどうなってしまうのか、ここあちゃんにはわかりません。ここあちゃんは、自分がなんという存在なのかわかりません。小人なのか、妖精なのか、はたまた幽霊と呼ばれるものなのか……。
 しかし、ここあちゃんにとってはそんなことはどうでもいいのです。おじさんのココアの中でしか目を覚ますことはないし、ココアの外へ出たいとも思わないのですから。
おじさんが自分を見つけてくれることを、ここあちゃんはいつも夢見ていました。