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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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さとうくん

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ぼくがさとうくんとであったのは、夏休みのはじめ、パパといったペットショップでだった。
 さとうくんは、ほっぺたをふくらまして、ぎょろっとした目でぼくの方を見た。
 なんだか怒っているみたいな目つきで、視線を感じたときどきっとしたけど、目があった瞬間、さとうくんはにこっと笑ったような気がした。
 しばらくの間、ぼくの目はさとうくんにくぎづけになった。
「さとし。どうした?」
 さとうくんの前から動かないぼくに、パパが声をかけた。
 パパもさとうくんをみて、ちょっとびっくりしたみたいだけど、ぼくがさとうくんと友だちになりたいと言ったら、パパは笑いながら「いいよ」といってくれた。
 こうしてさとうくんはぼくんちにやってきたんだ。

「いじめっこみたい……」
 さとうくんを初めて見たママの感想だ。それからママはさとうくんをじろじろながめてぼくに聞いた。
「なんていうの?」
「東錦っていうんだ」
「ふうん、佐藤錦ねえ」
 ママってば、さくらんぼとまちがえてる。「ちがうよ。東錦だってば。あ・ず・ま・に・し・き!」
 それでもママは何度も間違える。そのたびに言い直すのがめんどくさいので、『さとうくん』とよぶことにしたんだ。
 東錦というのは、三色出目金とオランダ獅子頭を交配させて生まれた、わりと新しい品種の金魚。
 そう、さとうくんは金魚なんだ。
 白い体に赤と黒のまだらもようで、見た目はあまりきれいじゃないし、ぼこぼこした頭から見えるぎょろっとした目つきも、ちょっとこわい。
 でも、さとうくんは見かけとは全然ちがっておとなしい。
 体が大きいので、最初はほかの金魚をいじめるんじゃないかと心配したけど、かえって遠慮しているみたいだ。
 長いこと池で飼育されていたせいか、水槽の水流に慣れていないのでうまく泳げない。それで、いつも隅っこの水草に隠れるようにしている。
 えさを食べるときだけ、一生懸命尾びれを小刻みにゆすって、不器用に泳いでくるんだ。
 ほかの金魚たちは優雅にすいーすいーって泳ぐけど、さとうくんだけは、ちょこちょこと尾びれを揺すって、半分逆立ちしたような格好で泳いでいる。
 たぶん、おなかが大きいのでバランスがうまくとれないんだと思う。
 そんなさとうくんにひかれたのは、ぼくも泳ぎが苦手だからだ。
作品名:さとうくん 作家名:せき あゆみ