カラの店
以前訪ねて来た少女だけでは足りなくてどうしようかと思っていたところに、ちょうどいい中身が来たものだ。
これがこの店のもうひとつの顔。「中身を預かる仕事」と、「容器を預かる仕事」。
まあもっとも、後者はだいぶ訳ありのモノが多いが。
そして男は蝋燭を吹き消した。
一切の明かりと共に、何もかもが見えなくなった。
「ねえ、アンタが名刺渡した―――えっと、だれだっけ。ホラ、いたじゃない?あの子どうしたんだっけ」
「今日はぁ。休んでるみたいねぇ」
「まさか噂を確かめに言ったとかぁ?」
「キャーァハハ。まっさかぁただの噂でしょぉ?」
そういったものの。欠席が一週間を過ぎた時点で、あの少女は行方不明だと言う事が担任の教師の口から知らされた。
少女たちは慌てふためいて探し回った。
名刺の記憶を頼りに―――しかし、少女は見つからない。それどころか、あの店にすら辿り着けない。
躍起になって思い出そうとするが、思い出そうとすればするほど記憶が曖昧になってゆき――いつしか、その少女の事も、忘れてしまった。
そして――――いつしかだれも、その少女の事を語らなくなった。
その頃
「ん…なんだろうコレ」
見知らぬ誰かが、あの名刺を拾っていた。