城塞都市/翅都 fragments
I want to know what love is
もうどーしようもないダメ女だったんだ、あいつは。無理やりエロビデオは見せるし、手ぇ早いし口は悪いし、マッパはやめろつってんのに平気で素っ裸でうろついちゃあそのまま人の顔跨ぎやがるしで、ホントにサイテーな女だった。
しかもとんでもない暴力女で一度やつあたりで顔の形が変わるほど殴られて寝込んだときも、「女のパンチで寝込むなんてバカじゃない?」とかあっけらかんと笑うだけで済ましやがってよ。あの時はホント、心の底から「いつか絞め殺してやろう」とか誓ったもんだ。
まぁある意味ではスゲェ女だったな。ザラにゃあいないっつーか、あんな女がその辺に居たら心底嫌だけどよ。はぁ?何が嫌なのって、嫌だろうよ、そりゃ。道端歩いてていきなり「その顔が気に入らないから殴らせろ」なんて言う女が居たら。迷惑じゃねえか、普通に。
大雑把でキレやすいくせに妙に頭の回転速くて勝気で、男相手の喧嘩も負け知らずでさ。ニヤニヤ笑いの咥え煙草が妙にサマになってて、いつでも余裕綽々で凛としてるのがクソ忌々しかった。髪が長いのも腕とか指が細いのもいつ見ても傷だらけなのも、全部が全部気に入らなかった。
おもっくそ地べた舐めさせて泥だらけにしてガンガン地面に頭叩きつけて無理やり土下座させてやる夢なんか何度も見た。血みどろになるまで殴りつけて体中の骨を丁寧にへし折って脳みそから内臓から全部ぐちゃぐちゃにしてやるとこなんか考えただけでイキそうになった。全部想像だけどな。
そんで、いつか絶対そうしてやろうと思ってる内に居なくなっちまった。アパートに帰ってこなくなって、またどっかで浮気か飲んだくれて潰れてんだって高を括ってる内に、あいつが死んだらしいってことを風の噂で聞いた。まったくズルイ女だったな。ホント大ッ嫌いだったよ、俺は。
「その台詞、を」
「ああ?」
「その台詞を、もう一回最初から最後まであたしの目を見て言えたら、信じてあげる」
「…………二度も言えるか馬鹿野郎」
ぼやいてあたしに背を向ける。大好きなヒトに捨てられて寂しいなら寂しいって言えば良いのに、不器用な男だ。
20100610
作品名:城塞都市/翅都 fragments 作家名:ミカナギ