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大人のための異文童話集1

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第10話 アリとキリギリス


またいつものように、キリギリスがアリに向かってお話をしています。

「キミはいつもでもいろいろなことをして、朝から晩まで一生懸命に働いているんだね。」
「そんなに一生懸命に働いて楽しいのかい?」

「それにしても、キミが楽しいと思うことって働くことなのかな?」

「ボクは毎日が楽しくて仕方がないんだよ。」

「ボクはこうしてポカポカとお日さまを浴びながら、好きな時に寝て好きな時に起きる。」
「そうして目覚めると音楽を奏でているだけでいい。」

「まあ、それぞれに好きなこと楽しいことが違うのだからね。」
「ボクは毎日好きな時に音楽を奏でて、キミは毎日朝から晩まで一生懸命働いて。」

「でも、それでいいんだろうね。」
「やってることが楽しいと思うなら、きっとそれでいいんだよ。」

いつでもキリギリスはアリの姿を見つけると、楽器を弾きながらそう言うのです。

初めのうちは“そんなくだらないことをして”と、アリはキリギリスのコトバには決して耳を貸すこもなく、黙々と働いていました。


そしてある日のこと…
アリは働き過ぎて病気になってしまいました。

そんなことになっているとは露とも知らないキリギリスは、毎日休みなく働いていたアリが、今日は一度も姿を見せないので心配していました。

最近ではアリも、働きながらキリギリスの話を聞いてくれていましたから、いつしかキリギリスは音楽を奏でるよりも、一生懸命に働くアリの姿を見ながらお話することの方が嬉しくて楽しくて、何ともいえない気持ちでいたのです。

そしてアリが病気になったことを知ったキリギリスは、急いでアリのところへお見舞いにいきました。

アリのお家の人はみんな仕事に出掛けていて誰もいません。
アリは何も出来なくて寂しくしてました。

そんな時にキリギリスのお見舞いです。
アリはとっても喜んで、いつも以上にキリギリスのお話を聞きました。
キリギリスも、思ったよりアリが元気そうなので安心しました。