大人のための異文童話集1
第7話 もう一度…星に願いを
ボクはようやく、こうして人間のカラダを手に入れた。
やっと人間の…少年になれたんだ。
でもね、今はもう、ゼペットおじいさんも居なくなって、女神様の姿も見られなくなっちゃったんだ。
ボクが人間になって分かったこと…。
それは人間というのはみんな、いつか死んじゃうと言うことなんだ。
ボクがまだ木のカラダだった時、ゼペットおじいさんが作った沢山のお人形たちは、どんなに長い時が経ってもいても、おじいさんがちょちょいとつっつくと、みんな元気になっていた。
だけど、ゼペットおじいさんが亡くなる時に、ボクにはそんなちょちょいができなかった。
ううん、ボクだけじゃない。
お医者さんという偉い人にだって、ちょちょいはできなかったんだ。
それなのに、この地上のいろいろな場所では、簡単に人を殺したり死なせたりしている。
一日の食べ物にもありつけず、学ぶことすら出来ない子供たち。
文化とか文明という名のもとに、飽食に溺れてこの地球を喰いつくす大人たち。
もしも神様がいるのなら、どうして人を分けてしまったのだろうか?
ボクは心から問いかける。
神様はいったい何を望んでいるのですか?
ボクたち人間が手に手を取って、この星に愛を蒔いて行くことではないの?
もしそうなら…ボクに人殺しの武器はいりません、ボクに進んだ文化はいりません。
そんなものよりもっと、ボクに愛というものをわからせてください。
作品名:大人のための異文童話集1 作家名:天野久遠