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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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「昔からうるさい小娘だが、今はそれよりも、魔導砲のスイッチが?ルーファス?の不注意で入ってしまった。あと3時間でこの星に到達するだろう。そこで我が城にある魔導砲でこの星に飛んでくる魔導砲を相殺する。だが、この城の魔導砲もエネルギー不足で宇宙空間にある魔導砲を相殺できるか微妙だ(むしろ、不可能に近いな)」
 ここにいる魔導士たちのエネルギーを注ぐ込み、魔導砲を撃つ。だが、カーシャの考えでは、ここにいる魔導士だけではエネルギー不足であった。そのことにはクラウスも気が付いた。
「僕たちだけのマナでは無理だろう。いくらカーシャ先生でもアグリッパ様でも、世界を吹き飛ばすほどのマナを魔導砲に注ぎ込むことは不可能」
 痛いところを突かれた。かなりど真ん中の図星だった。
 この展開は世界中の人々に実況中継されていて多くの人々が観ている。その中にはこの人物もいる。
《僕の出番のようだね(ふにふに)》
 カーシャのすぐ横にローゼンクロイツのホログラム映像が映し出された。
《今、ここにいる君たちの映像は世界中の人々が見ているんだよ(ふあふあ)。つまり、その人たちに呼びかけて、魔導砲にマナを送ってもらうことにしよう(ふにふに)。魔導砲に人々のマナを送る転送に関しては僕が引き受けるよ(ふあふあ)。ところで、その魔導砲はどこにあるんだい?(ふにふに)》
「この城全体が魔導砲なのだ(……ふふ、これでも世界を破壊できるだけのエネルギーを放つことができる代物だ)」
 ただ、地上にある魔導砲で地上を攻撃してこの星を吹っ飛ばすことができないので使用していなかっただけのこと。だが、それ以外の問題として、エネルギーが注ぎ込まれておらず、使用が不可の状態になっている。
 魔導砲を撃つには魔導砲にエネルギーを注ぎ込まなくてはいけない。宇宙空間にある魔導砲は今宇宙にあるマナを溜めている最中なのだ。
 自分の玉座に向かったカーシャは、その玉座の肘掛の裏にあったスイッチを押した。すると城全体が淡く光り出し、どこからか歯車の回る音や物が動く音が聞こえてきた。
「さあ、この城にマナを注ぎ込むのだ」
 カーシャの言葉にここにいる魔導士たち、そして世界中の人々がこの城にマナを注ぎ込んだ。それに反応して城の輝きが一層強くなる。だが、まだまだ足らない。
 世界中の人々が、世界中の全てのものたちが一丸とならなくてはいけない。
 世界各地で祈りを捧げる人々。魔導士でないもの身体にもマナの力は宿っている。全てのものにマナは宿っているのだ。
 この星、ガイアにもマナは宿っている。この星はひとつの生命体と言えるのだ。
 地上に生まれた生命はガイアから分離した小さなマナを宿し、時を経て果て、そしてガイアに還っていくのだ。その循環により、この世界は行き続け、成長していく。
 地上が淡い光を放ち、命の鼓動が地面の奥底から聴こえてくる。この星、この星に全てものたちがこの城にマナを注ぎ込む。
 長い間、世界の祈りは続いた。そして、辺りが暗闇に包まれ空に星が輝き出したころ、星とは別の輝きが東の空に現れた。
 宇宙から魔導砲が放たれた。それは地上から肉眼で確認できるほどの大きさであった。あの魔導砲が地上にぶつかったら、この星が木っ端微塵に砕ける。本当に魔導砲の光を見て、人々は改めて認識した。
 日の光よりも明るい輝きが宇宙から飛来してくる。だが、地上の魔導砲のマナはまだ足りない。
 マナを注ぎ込む人々の疲労は極限に達していた。ハルカたちもそうだ。
「うぅ〜、体力っていうか、なんかスゴイ身体がだるいんだけど?」
「マナは命の源だからね。でも、今はやらなきゃいけないんだ」
 真剣な顔をしてこう言ったルーファスの横顔はいつもより、ちょっぴりカッコよくハルカの瞳には映った。
 飛来してくる光はすぐそこまで迫っていた。
 エルザが大声で叫ぶ。
「まだ、マナは足らないのか!?」
「もう、少しだ(だが、全出力で撃っても……ふふ)」
 カーシャの額から汗が流れる。カーシャの額からだ。ちなみにアグリッパ老人の様態はかなり悪い。
 宇宙から飛来する魔導砲が大気圏に突入する寸前、カーシャが大声を出した。
「発射だ!」
 城全体が激しく揺れ、唸るような音を出した。
 ごぉぉぉぉぉっという凄い音を立てながら、城から光の柱が天を貫くように伸びた。
 魔導砲と魔導砲がぶつかり合い、目を開けられないほどの光が地上に降り注ぎ、人々は空の上で何が起こっているのか、感じることでしか確認できなかった。
 光と光のぶつかり合いは世界から闇を消して、全てを白い世界で包み、呑み込んだ。そして、世界は――

 ハルカは目覚めた。
「……あれ、ここって?」
 見覚えのある部屋。TVや机、そして、お気に入りのカーテンのある窓。――ここはハルカの世界の自分の部屋だった。
「もしかして……帰って……もしかして、全部夢だったのかな?」
 目覚めたら自分の部屋。そう考えたらもしかして、今までの出来事は全部夢だったのかもしれないと思った。
 剣と魔法の世界――そんな世界があるはずがない。
「なんか、少し疲れてるみたい……もう少し寝よ」
 そう言ってハルカは深い眠りに落ちた。
 静かな寝息を立てるハルカ。
 ハルカの夢のような冒険は終わった。でも、本当に夢だったのか?
 もし、あの出来事が現実だったならば、そのことはハルカの?身体?が身に沁みて覚えていることだろう。