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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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「よし、それでこそルーファスだよね。じゃあ、カーシャに向かってレッツゴー!」
 レッツゴーと言われても少し困る。ルーファスはカーシャに刃向かいたくないが、ハルカをもとの世界に帰さなければならない。板ばさみにされて窒息しそうだ。
 その時だった。この場に新たな新キャラが登場したのは!
 白髪白髭の杖を突いた見るからにヨボボヨの爺さんがこの場に乱入して来た。
「やっとこさ見つけたぞ、魔女王カーシャよ(こやつを探すのに、はて、何年くらいの月日を費やしたかのぉ?)」
「誰だおまえは?(この爺さんは誰だ?)」
 全く記憶に御座いません状態のカーシャ。この老人の正体とは?
「わしのことを忘れたのか、この魔女が。わしは……わしは……誰じゃったかの?(ロバート、ポール、エリザベスじゃったかの?)」
 この老人はだいぶボケていた。
「ああ、思い出したぞ、わしの名前はハインリヒ・ネッテスハイムじゃった(少しボケたかのぉ?)」
 だいぶボケている。
 名前を聞いてもカーシャはこの人物について思い出せなかった。もしかして、老人は自分の名前を勘違いして、別の名前を言ったのか。いや、違うこれが彼の本名で、人々に知れ渡っている名前は別にある。
 驚いたルーファスは裏返った声をあげた。
「もしやあなたが、かの有名なアグリッパ様ですか?(……そんなわけないか、このボケ老人がね)」
「おお、そうじゃ、その名前じゃ。その方が世間様に知れ渡っておる」
「ああ、思い出した(だいぶ歳をとっていたので見た目ではわからなかった)」
 ぼそりと呟いたカーシャはやっと思い出した。この男は?過去?にカーシャを討伐するために編成された魔導士の一団のひとりだった。
 だが、今ごろカーシャの城を見つけるなど、たまたまカーシャがここに帰っていなかったらどうする気だったのか? もしろ今まで探し続けていた彼の根性はスゴイと褒めてあげたい。なんせ、1000年以上もの月日を費やしているのだから。
「よく、人間が永い時を生き長らえたものだな。で、今更アグリッパが私に何のようがあるというのだ……まさか私を倒すなんて言うわけがないな。(こんなご老体のヨボヨボ爺さんがな)」
「わしの仲間は長い時の流れの間にみんな死んでしまったわい。残っているのはわしだけだ。仲間のためににもお主の首を貰わねばならん。じゃが、なぜわしをお主の首を狙っておるんじゃったかの?(こそ泥だったか、わしの逃げた女房だったか?)」
 ボケてまで追い手を追い続けるとは大した執念だ。
 このアグリッパがカーシャ討伐の旅に出たのは、もちろん過去に魔女王としてカーシャが人々に恐れられていたからだ。
 キラリ〜ンとカーシャの目が妖しく輝いた。またまたとんでもないことをいいそうな空気がこの場を包み込む。
「では、こうしよう。ハルカ&ルーファスチームとアグリッパと私で3チームに分かれて戦い、勝った者が世界を自分のものしていい権利を持つことにしよう。魔導砲の制御装置はこのイヤリングだ。これを勝者にはくれてやる(勝つのは私だがな、どんな手を使っても私は勝つ……ふふ、卑怯者)」
 蒼い宝石の付けられたイヤリングが妖しく輝く。
 アグリッパの杖を高く上げて笑い出した。
「ふぉふぉふぉ、そうじゃった。わしは世界の覇権を賭けて戦っているんじゃった(いや、違ったかもしれんな)」
 別に世界の覇権を賭けてカーシャを探していたわけではない。彼の発言はだいぶ外れたことばかりだ。
 なんだかわからないうちに世界の覇権をめぐる戦いが勃発。しかもアグリッパまでもがその戦いに強制参加。
 マナと呼ばれる魔法エネルギーが風を巻き起こし、この場に戦慄を呼ぶ。
 杖を構える老人はただのボケ老人ではなかった。魔法を使うの能力は歳とは関係ない。老人の魔力は凄まじいものだった。
 相手の発するマナの力に負けじとカーシャも出力をあげる。
 ――この場でついていけてないのはルーファスとハルカだった。2人は隅っこで小さくなっている。できれば戦いに巻き込まれたくないのだ。
「あのさぁ、ルーファス、ちょっと耳貸してくれないかな?」
「何ハルカ?」
 小さなハルカの身体をルーファスは持ち上げて、耳元に近づけた。
「カーシャさんのイヤリングを奪うことできないかな? そうすれば全部丸く治まると思うんだけど?」
「そうだね、どうにか隙を見てイヤリングを奪おう(でも、どうやって?)」
 ポケットに入った財布ならまだしも、耳についたイヤリングを盗むのは大変困難だ。むしろ、普通は無理。
 アグリッパは呪文を唱えるべく杖を高く掲げた。この杖はマナの増幅装置の役目を果たしている。
「セ……セイ……呪文が思いだせん(はて、何の呪文を唱えようと思ったんじゃったかのぉ?)」
「ホワイトブレス!」
 カーシャは老人を殺るつもりだ。老人愛護の精神なんて微塵もない。てゆーか人殺しなんて悪いことを本気でするつもりだ。
 白い煙のようなブレスが老人に襲い掛かる。
「そうじゃった、ファイアーブレス!」
 小柄な老人の杖から巨大な炎が吐き出された。
 白と紅がごぉーっという音を立てて混ざり合い、相殺した。そのエネルギーが凄まじく、巻き起こった爆風によってルーファス&ハルカは大きく吹き飛ばされてしまった。
 完全にルーファス&ハルカは置いていかれている。彼らの出る幕はない。