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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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第1部_第1話 いざ、召喚!


 部屋の中は、カビや薬品臭い――そして汚い。
 汚いというのを具体的に言うと、部屋の中は魔導書や魔導具の類が床に散乱していて足の踏み場が無いということ。
 この汚い部屋(家)に住んでいるのはこの国で超有名な魔導士ルーファスである。有名といっても彼の使う魔術が凄いとか、そう言ったもので有名なのではない……彼が有名なのはその『へっぽこぶり』からであった。
 へっぽこ魔導士ルーファスの名を大人から子供、お隣さんの猫まで(どこの猫だよ)知らぬ者はこの国にはいない。ルックスはそこそこイケてるのだがそのへっぽこぶりから、彼のことをかっこいいと言う人はそうはいなかった。
 そんな彼は今、汚名返上のため、あるビックな召喚魔法をしようと試みていた。
 大魔王ルシファーの召喚。未だかつて無い超一流の悪魔の召喚。この大魔王ルシファーを召喚して自分の下部として使うことができれば彼の名は超超天才大魔導士ルーファス様として世界に轟くだろう……。それはあくまで成功した場合なのだが……。

 ルーファスはカビ臭くて薄暗い自宅の地下室(実験室)で大召喚の準備をしていた。
「よし、あとは呪文を唱えるだけだ」
 ルーファスは一息付くと手に持っていた分厚い魔導書を開いた。
「えーと、なになに……闇よりもなお暗きもの……されど汝の輝きは陽よりも明るく……黄金の翼をはためくかせる……我は汝と契約する……出でよ大魔王ルシファー!!」
 呪文の詠唱が終わると同時に建物が大きく揺れ、戸棚に入っていた薬品の入ったビンが次々と地面に落ち激しい音を立てながら割れた。
「成功か……それとも……」
 突如床に描かれた魔法陣のちょうど上、約1mくらいのところの空間が渦を巻くように歪曲し始めた。そして歪んだ空間の中から何かが飛び出してきた。
「やったー成功だ!」
 と思った瞬間。
「いたたたたた、おしり打っちゃった……」
 と大魔王らしからぬ声が……?
 出てきたのは女の子!? しかも、出てくる時にお尻を打ったらしく、お尻を擦っている。
「(こ、これが……大魔王なのか!? ……しかし)」
 召喚された女の子は薄い栗色の髪に黒い瞳、年は15・6歳といったところか、顔はそこそこ可愛い、って普通の女の子みたいな感じ?
「(……普通っぽいぞ、だがしかしこの世界では見たことのセンスの服を着ている……変わり者?)」
 女の子の服装は明らかにこの世界のものではなかった。ミニスカートにちょっと変わった上着にあれはリボンか?
「(よし、ここは直接尋ねるのが確実だ)あの〜あなたルシファーさんですか?」
 女の子と目が合った。女の子は凄く驚いた表情をしている、何だか今始めて自分の前に人がいることに気づいたようだった。
「ここどこ?」
 女の子は辺りを見回して、いきなりルーファスの襟首に掴みかかってきた。
「ここ何処なの!?」
「(この子なんだか凄く怒ってるぞ、いや、メダ○ニか?)あ、あのここは私の家でして……」
「だからなんで私がここにいるわけ!?」
「それは私があなたを召喚して」
「召喚? なにそれ?(う〜ん、RPGに出てきたあれかな?)」
「別の異世界からモノを呼び出す魔法ですけど……」
「意味わかんない」
「(召喚も知らないなんて……もしかしてやっぱり、失敗)あなたルシファーさんですか?」
「ルシファー、誰それ?(外国の人?)」
「(やっぱり、失敗か)」
 案の定ルーファスは召喚の術を失敗していた。それというのも、
「(やっぱ、人の変わりにマグロの刺身を生贄にしたのがダメだったか、ふんぱつしたのになぁ)」
 あたりまえだ、召喚の手順は正確に行わなければ意味が無い。しかも、人の変わりにマグロの刺身を生贄にする魔導士がどこにいようか(ここにいたのだが……)。マグロの値段が高いかろうが安かろうが大した差はない、どちらにしろ失敗するのだから。
「何考えてボーっとしてんの」
 パン! と女の子の軽い平手打ちがルーファスのほっぺたにヒットした。
「痛いだろ、何すんだ!」
「ねぇ、早く家に帰りたいんだけど、ここ何処なの?」
「(ちょっと痛かったが相手が女の子だからここは我慢だ)ここはアステアと呼ばれる国にある私の自宅だ」
「アステア……聞いたこと無いけど?」
「たぶん君はこことは別に世界から召喚されたのだろう」
「別の世界?(意味不明?)」
 女の子は困惑の表情を浮かべた。
「では君の世界の名前を言ってみたまえ」
「世界……世界に名前なんてないけど星の名前はチキュウだけど」
「国の名前は?」
「ニホンっていう国」
「(やはり聞いたことが無い名だ)やはり、君は別の世界から来たらしい」
「まさか!? ……信じられるわけないでしょ、本当だとしても何で私が……?」
 ルーファスの表情が突然焦りの色へと変わり、頬に冷たい汗が流れた。
「そ、それはつまり……(まずい)」
「それはつまり?」
 ルーファスの顔に女の子の顔がぐぐっと近づいて来た。その顔についている二つの瞳はまさに『疑い』の眼差しをしている。
「ごめん、失敗して呼んじゃった」
「……はっ?(失敗したってどういうこと)」
「つまり、君は間違って私に呼ばれたわけだ(ついつい、本当のことを言ってしまった)」
「じゃあ早く帰してよ」
「それは無理」
 ルーファスはあっさりさっぱりきっぱり答えた。
「無理ってどういうこと?」
「生憎だけど、帰し方しらないんだ、なんせ普通は用事が済んだら勝手に帰ってくれるもんだから、あははは」
「あははは、じゃないでしょ、”方法を”考えて!」
 女の子は方法のところをかなり強調して言った。
「う〜ん、たぶん用事が済めば帰れると思うけど……(その用事っていうのが……)」
「用事って何?」
「召喚者が召喚したモノを呼び出した理由っていうかなんていうか」
「じゃあその用事を済ませれば私は家に帰れるわけ?」
「まぁそういうこと……かなぁ」
 ルーファスは言葉に明らかにおかしい含みを持たせた。
「(明らかになにかを隠してる表情)言葉が途中で止まったけどどういうこと?」
「(やばいぞ、やばい、しかしこーなったら本当のことを)……実は」
「実は?」
「世界征服をするために呼んだりしちゃったんだよねぇ……エヘっ」
「はっ! 世界征服?(なに言ってんのコイツ)」
「だーかーらー、せ・か・い・せ・い・ふ・く」
 ルーファスはフリ付きでちょっと可愛らしく言ってみた。がすんなり交わされた。
「詳しく説明して」
「あのさぁ〜、その前に襟放してくれないかな?」
「あっ(ず〜っと掴んだままだった)」
 女の子に襟首を放されたルーファスは襟を両手できゅっきゅっとやると、
「まぁ、ここで話すのもなんだから、上に上がろう。こっちだよ」
 すたすた歩くルーファスの後ろを女の子は付いていき、二人は階段を登り1階に出た。
「足元気をつけて、凄く散らかってるから。私は紅茶でも入れてくるからそのへんに座ってて」
 そう言うとルーファスは台所の奥に消えて行ってしまった。
「(足元気をつけてって)」
 女の子はポケットから眼鏡ケースを出すと、ささっと眼鏡を取り出しかけた。
「(うぁ〜マジで汚い)」