サリャーリス
仕事帰りの車の中、MDをかける。
中身は男性が女性の曲をカバーしたアルバムで、母がその男性の声を好きでよく流していた。
いつもなら聞き流しているだけだったのに、その日は違った。
久保田早紀の「異邦人」の歌が流れた時、その歌詞が鮮明に頭に流れ込んできた。
「さよならだけの手紙、迷い続けて書き、あとは悲しみを持て余す異邦人」
ああ、と大きく息を吐いた。
それだ。
そうか。
私は、持て余していたのか。
さよならすら言えなかった、この悲しみを。
自然と涙が零れてきた。
顔を知らない人が死んでも、涙が出ると。
こんな悲しみがあることを、私は知った。
それから数日、サーリャスさんのmixiページを何度か訪れた。
プロフィール画像の下。
最終ログイン日時の表示が10時間、1日、2日と広がっていく。
この時間が縮まることはもうない。
電子の世界からも、サリャーリスさんの温度が少しずつ冷えていくようだった。