小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
たかべちかのり
たかべちかのり
novelistID. 692
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

サリャーリス

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
その人とは1度も会ったことはない。
mixiでたまに日記にコメントを残すくらいの付き合いだった。
ハンドルネームはサリャーリス。
好きな映画のタイトルらしい。

きっかけは、喫茶「白猫」のコミュニティ。
ジャズ喫茶で、大学の頃から私は好んで利用していた。
どちらが先に話しかけたかはもう覚えていないが、同じ店が好きだということでマイミクになった。
私たちは、同じ席に座り、本を読みながら音に浸るのが好きだった。

<今日は僕の好きなモンクがかかっていました>

≪いいですね。モンクはサリャーリスさんに教えてもらいましたが、個性的な音ですよね≫

<仕事帰りにまたよろうと思います。今日は梅原猛を読もうかな>


会ったことはなくても、その木の椅子に座る時、なんとなくその人のことを思った。
それから、互いに広く音楽を聴くことが好きだった。
私は20代、その人は30代で、ちょうど聞いていた音楽の世代がずれている。
互いに知っている音楽が全く違うので、音楽を紹介しあって、趣味の幅を数ミリ広げる。

そんな付き合いが1年ほど続いた。



その日、赤い文字で新着メールが来ていた。
ハンドルネーム、フタバ。知らない人である。
なんとなく警戒してメールを開き、私は唖然とした。



<はじめまして。
 突然のメールをお許しください。
 10月30日、共通のマイミクであるサリャーリスさんが急逝されました。mixiの招待主として故人に代わり生前お世話になった御礼を申し上げます>



私は頭が真っ白になった。
どう反応するのが正しいのか、わからなかったからだ。

性質の悪い冗談だと思ってフタバさんのmixiページを見たが、そこにはサリャーリスさんの訃報への嘆きの日記が書かれていた。
健康を普段から顧みない人だったようで、そのことへの憤りが書かれており、とても冗談とも嘘とも思えなかった。
とりあえず私はフタバさんに御礼のメールを送った。

それから、しばらくぼんやりしていた。
会ったこともない人間が死んだ。
これは、どう対処するのがいいのだろう。
顔も本名も知らないのに、葬儀に行くなんてそもそも無理な話だ。
生前だって会おうと思えばできたがそれはしなかった。
いなくなってから会いたくなったなんて、都合がよすぎる。







その日の夜はいつもより暗く感じた。
作品名:サリャーリス 作家名:たかべちかのり